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バイポーラトランジスタの小信号等価回路
アナログ電子回路を独学で学んでいる者です。 最初に写真(ii)のバイポーラトランジスタのエミッタ接地回路についてです。ベースーエミッタ間電圧Vbeを大きく変化させていくと、ある点で"コレクタ電流Icが流れすぎて、出力電圧Voが"接地電位でクランプ(固定)される"とあり、確かにグラフからそのように見てとれます。これは一体何が起こったのでしょうか?VoはVo=Vcc-Ic*RLで表され、トランジスタのコレクターエミッタ間電圧に等しいと考えています。これがゼロになるという事は、トランジスタ内での電圧降下がゼロになるという事でしょうか? 次に写真(i)の同じくエミッタ接地回路についてです。 この回路の各部分にあるコンデンサはどういった役割があるのでしょうか。教科書には"直流バイアス点に信号を入出力するため"とありますが、仮にコンデンサがない場合、信号を入出力できないのでしょうか?特に出力端子側についているC2のコンデンサが気になります。 次に小信号等価回路についてです。 なぜこのような回路に変換できるのか、一通り教科書を読みましたが、分からない点が多々あります。 写真(iii)の回路は(i)の等価回路で、(iv)の等価回路は、ごく一般的なエミッタ接地回路の等価回路になります。 まず(iii),(iv)どちらの等価回路にも電流源gmVbe'がありますが、これは入力電圧v1によって、Vbeが変化し、このVbeから、ベースが広がり減少した電圧分を差し引いた電圧Vbe'によって生じるコレクタ電流Icの変化分ΔIc'だと考えています。 次に(iv)のroについて、 1/ro=go=∂Ic/∂Vceより、goVceは、コレクターエミッタ間電圧Vceの変化によって生じるコレクタ電流Icの変化分ΔIc''になると考えています。 そして全コレクタ電流の変化分ΔIcは、i2の向きも踏まえて、ΔIc=ΔIc'+ΔIc''=-i2になるのだろうと考えています。 ここで質問ですが、なぜΔIc'分のgm*Vbe'の方は電流源として表され、ΔIc''分のgo*Vceは抵抗roとして表されているのでしょうか?2つとも電流源gmVbe, goVceで表すのは正しくないのでしょうか? もう1つ質問ですが(iii)の回路では、なぜかroが見当たりません。 (iii)も(iv)も同じ小信号等価回路であるはずなのに、なぜでしょうか?
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> 例えばある時間にこの小電流I"がコンデンサC1に対して左から右方向に流れているとし、... といった様な電流の式が成り立つのかなと考えていますが、この考え方は正しいのでしょうか。 正しいです。 より汎用的に言うと、ベース周りには交流電源 V_1 と直流電源 V_CC の2つの電源があるため、それぞれの成分を分離して計算し、重ねの理で合成しているわけです。 > ここで(i),(ii)のGNDの基準点の違いがあるとは、(ii)では、エミッタ電圧が0Vですが、(i)ではエミッタに繋がった抵抗の分大きくなるという事でしょうか。 そうです。 何を基準にするかによりますが、エミッタを基準 (= 0[V]) とすると、(i) のGNDの電圧は -I_E × R_E [V]、(ii) のGNDの電圧は 0[V] になります。 逆にGNDを基準 (= 0[V]) とすると、(i) のエミッタの電圧は I_E × R_E [V]、(ii) のエミッタの電圧は 0[V] になります。 (i)と(ii)はエミッタ接地回路として同じ形だということをわかりやすくするために、GNDの基準点が異なるという表現をしました。 > そしてこの時(i)の抵抗Reと並列に繋がれたコンデンサCeが交流成分をカットするという性質には、エミッタ電圧を変動しない一定電圧として固定する役割があるのでしょうか。 よく気付かれましたね。 R と C の並列接続は、内部抵抗のある電池だと考えるとわかりやすいです。 R_E と C_E だけでなく、R_1, R_2, C_1 も同じ形になっていることに気付けば、R_1 // R_2 // C_1 の電池となり、R_E // C_E が作る電圧と相殺して、(ii) の V_BE と等価になるということがわかります。 ところで、直流電圧の観点で見れば、 (i) で結局やりたいことは、V_CC という"1個の"直流電源だけで (ii) のような複数の直流電圧を作ることなのです。 実際、古い真空管回路では個別の電池を使うことがあるそうですが、電池の数を増やすとコストがかかるので、回路で工夫しているのです。
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- myuki1232
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> まず、全ての電流には直流成分と交流成分が含まれている事を全く知りませんでした。例えば乾電池と豆電球一個からなる回路を流れる電流は、直流成分のみでできていると考えていました。 > すると交流電流というのは、大部分が交流成分がからなり一定周期ごとに向きが変動する電流の事になるのでしょうか。 少し混乱させてしまったかもしれませんね。 一般的には、直流とは時間的に流れる向きが変わらない電流のこと、逆に交流は向きが変わる電流のことと定義されます。 しかしこの定義では、向きが変わらなければ大きさが変わっても直流と呼べるわけです。例えば、0~100[V] まで変化する電流があったとして、これは向きが常に正なので直流と呼びます。一方、ほんの少しだけ変化して -0.1~99.9[V] に変化する電流になると、これは交流と呼ぶことになってしまいます。 これでは都合が悪いので、電流を、大きさが時間的に変わらない成分と変わる成分に分けて考えます。大きさが時間的に変わらない成分を引けば、必ず向きは時間的に変化します。これを直流成分と交流成分と呼んでいるわけです。 直流成分と交流成分に分ければ、それを足した結果が直流か交流かは、単にそれぞれの大きさの違いに過ぎません。 確かに、理想的な直流電源と抵抗からなる回路を考えれば、交流成分はありませんし、理想的な交流電源からなる回路を考えれば直流成分はありません。 しかし、「直流成分だけからなる電流」「交流成分だけからなる電流」「直流成分と交流成分が混ざった回路」と考えるよりも、「すべての電流は直流成分と交流成分が混ざっている。ただし、どちらかの大きさが0であることがある」と考えたほうがわかりやすいし、「直流成分と交流成分に分ける」ことが常に可能になる利点があります。 (ちなみにまだ早いかもしれませんが、単にわかりやすさだけでなく、理想的でない、現実に存在する回路で、純粋な直流成分だけ、交流成分だけからなる回路は、極めて特殊な環境以外はほぼ存在しません。「乾電池と豆電球一個からなる回路」にも交流成分は必ず存在します。例えば電線が拾った外来の電磁波や、熱雑音があります。独学では難しいかもしれませんが、オシロスコープなどで見てみましょう) > Vcc→R1→R2→Vccの区間ではキルヒホッフの式が成り立っていますが、同様に(i)の回路の他の区間、例えば入力電源→C1→ベース端子→エミッタ端子→RE//C2→入力電源や、入力電源→C1→R2→入力電源と一周する区間においても、キルヒホッフの式は同様に成り立っているのでしょうか。 その通りです。 > ここで、(ii)の回路を見るとベース側の交流電源の下に直流電源VBEが繋がっていますが、(i)の回路では交流電源v1の下に直流電源VBBが省略されているのか、もしくはv1に取り込まれているのかと考えています。 少し違います。 (i) と (ii) は似ていますが大きな違いがあります。 (i) はエミッタとGNDの間に R_E // C_E が有ります。(ii) はエミッタが接地しています。 つまり、(i) と (ii) はGNDの基準点が異なります。この点に注意して見比べてください。 以下の点が間違いです。 ・VBB なるものは存在しない(v_1 の直流電圧は 0 です) ・C1 の電圧降下は0ではない
お礼
大事な要点を隅々まで教えていただき本当に助かります。 まだいくつか良く分からない所がありますので、宜しければ教えてください。 まず(i)の回路の直列に繋がれたコンデンサC1は、直流成分をカットするという事で、ここには交流成分のみの小さな電流が周期的に向きを変えて流れると考えています。 すると、この後この小電流I"はR1方面から来た直流電流Ir1と分岐点で合流すると思いますが、この後の小電流I''を含む分岐点のまわりの各電流についての式の作り方について質問があります。例えばある時間にこの小電流I"がコンデンサC1に対して左から右方向に流れているとし、R1方向I"r1, ベース方向I"b, R2方向I"r2に分かれると考えて、一方Ir1の方はベース方向IbとR2方向Ir2に分かれるとすると、R1にはIr1(上から下)-I"r1(下から上), R2にはIr2(上から下)+ I"r2(上から下), ベースにはIb(左から右)+I"b(左から右) といった様な電流の式が成り立つのかなと考えていますが、この考え方は正しいのでしょうか。 次に(i),(ii)の回路の違いについてですが、ご指摘のように(ii)の回路では、トランジスタのエミッタは接地されていますが、(i)の回路ではエミッタは接地されずRe//Ceを介してGNDに繋がっています。 ここで(i),(ii)のGNDの基準点の違いがあるとは、(ii)では、エミッタ電圧が0Vですが、(i)ではエミッタに繋がった抵抗の分大きくなるという事でしょうか。そしてこの時(i)の抵抗Reと並列に繋がれたコンデンサCeが交流成分をカットするという性質には、エミッタ電圧を変動しない一定電圧として固定する役割があるのでしょうか。
- myuki1232
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> 写真(i)の回路では、C1とC2のコンデンサは回路に直列に繋がっているため、交流成分のみを通すと思うのですが、C1を通過した交流成分(向きが時間変化する電流)のみが、この後抵抗R1,R2,トランジスタのベース方面に流れ込むのでしょうか? > それともこの時、R1,R2, ベース, コレクタに流れ込む電流は、向きが変化する交流成分だけでなく、右側の直流電源Vccによる直流成分と合わさり、変動はしても向きは変わらない直流+交流電流となっているのでしょうか。 「それとも」で繋いでらっしゃいますが、違いがよくわかりません。 用語の使い方があやふやではないでしょうか。「交流」と「交流成分」の区別はついていますか? とりあえず、飽和しない限りは常に直流成分と交流成分の両方がかかっているとは言っておきます。(すべての電流は直流成分と交流成分に分けられるのだから当たり前で、トートロジーに近いですが) もう少し具体的に考えてみてください。 まず、直流バイアス点を考えます。仮に V_CC=5[V], R1=R2 とします。 無信号の時のベースの電位 V_B = R_2 / (R_1 + R_2) = 2.5[V]、エミッタの電位 V_E = V_B - V_BE = 1.85[V] と近似します。 ここで、入力信号に ±10 [mV] が加わったとすると、ベースの電位は V_B = 2.5[V] ± 10[mV]、エミッタの電位は V_E = 1.85[V] ± 0[mV] になります。 (ベースは交流的に入力に繋がっていますが、エミッタはGNDに繋がっているからです) この時、ベース・エミッタ間への入力は、直流成分が V_BE で、交流成分が ±10[mV] になります。
お礼
突拍子も無い質問をしてしまい申し訳ありませんでした。 まず、全ての電流には直流成分と交流成分が含まれている事を全く知りませんでした。例えば乾電池と豆電球一個からなる回路を流れる電流は、直流成分のみでできていると考えていました。 すると交流電流というのは、大部分が交流成分がからなり一定周期ごとに向きが変動する電流の事になるのでしょうか。 次に(i)の回路について、具体的な例を出していただき助かります。 ここで、(ii)の回路を見るとベース側の交流電源の下に直流電源VBEが繋がっていますが、(i)の回路では交流電源v1の下に直流電源VBBが省略されているのか、もしくはv1に取り込まれているのかと考えています。 (i)の回路のVBについて、ご回答ではVcc*(R1/(R1+R2))+ (入力側の交流電源 ±10 [mV]) として求められています。 交流電源v1の下に直流電源VBBを加えて、このVBをVBB→交流電源±10[mV]→C1→ベース→エミッタ→RE//CEの閉回路で考えて、C1の電圧降下は0とすると、VB=VBB+ ±10mvとなりそうなのですが、これは正しいのでしょうか。 また突拍子も無い質問であったらすみません。
補足
すみません。 VB=Vcc*{R1/(R1+R2)}*Vcc + 10 [mV]は、VB=Vcc*{R2/(R1+R2)} [V] + 10 [mV]の間違いです。 最後の質問が分かりづらかったかもしれません。 Vcc→R1→R2→Vccの区間ではキルヒホッフの式が成り立っていますが、同様に(i)の回路の他の区間、例えば入力電源→C1→ベース端子→エミッタ端子→RE//C2→入力電源や、入力電源→C1→R2→入力電源と一周する区間においても、キルヒホッフの式は同様に成り立っているのでしょうか。
- myuki1232
- ベストアンサー率57% (97/170)
(1) 出力電圧のクランプについて > これがゼロになるという事は、トランジスタ内での電圧降下がゼロになるという事でしょうか? 理想的には、そう考えても良いです。 バイポーラトランジスタの V_CE は、ある電圧(約0.5V)以下で飽和し、それ以上電流を増幅できなくなります。 (2) コンデンサの役割について 入出力についている C1, C2 は、直流バイアスを保ったまま交流信号だけを入出力するのが目的です。 仮にこれがないと、各点の電位が0になってしまいますので、増幅回路として動作しなくなります。 エミッタについている C_E は少し目的が違い、エミッタを交流的に接地して増幅率を大きく保つことが目的です。これが無いと増幅率が R_L / R_E に下がってしまいます。 (3) r_o について > なぜΔIc'分のgm*Vbe'の方は電流源として表され、ΔIc''分のgo*Vceは抵抗roとして表されているのでしょうか?2つとも電流源gmVbe, goVceで表すのは正しくないのでしょうか? 等価回路に変換する目的が、入力電圧を電流に変換する、内部コンダクタンスを持った電流源として表現することだからです。 また、V_CE は出力電圧ですから、出力電圧から線形に出力電流に変換する電流源などを入れても、抵抗で表せるものを無駄に複雑にしているだけで意味が無いです。 > もう1つ質問ですが(iii)の回路では、なぜかroが見当たりません。 r_o は R_L に対して十分大きいため、開放と見なせるからです。
お礼
とても分かりやすい説明をしていただきありがとうございます。 コンデンサの所だけ、よろしければもう少し教えていただきたいのですが、初めになぜコンデンサがないと各部の電位が0になるのでしょうか。 次に、エミッタ側のコンデンサについて教科書にも"交流的に接地する"と書かれているのですが、これにはどういった意味があるのでしょうか。
補足
直流+交流成分をもつ電流に対し、回路に直列に繋いだコンデンサは直流成分をカットし交流成分のみを通す。逆に、回路に並列に繋いだコンデンサは交流成分をカットし直流成分のみ通すという事が分かりました。 写真(i)の回路では、C1とC2のコンデンサは回路に直列に繋がっているため、交流成分のみを通すと思うのですが、C1を通過した交流成分(向きが時間変化する電流)のみが、この後抵抗R1,R2,トランジスタのベース方面に流れ込むのでしょうか? それともこの時、R1,R2, ベース, コレクタに流れ込む電流は、向きが変化する交流成分だけでなく、右側の直流電源Vccによる直流成分と合わさり、変動はしても向きは変わらない直流+交流電流となっているのでしょうか。
お礼
大変分かりやすい説明をしていただきありがとうございます。 まず電流について、"重ねの理"を使って考える訳ですね。電源を個別に分けて考えると、より理解を深める事ができました。 次にGNDの基準点についてですが、私自身、回路のどの場所を0Vの基準点にとるかをしっかりと抑えておく必要がありました。 最後に、RE//CE, そしてR1//R2//C1についてですが、ご指摘の様に、この2つの部分はどちらも内部抵抗を持った電池に置き換えられて、これらが相殺しVbeのみが残る事が分かりました。 沢山の素晴らしい考え方をご教授していただき本当にありがとうございました。