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印鑑の盗用は110条?
Aの子B(30代)がAの実印を盗用して委任状を作りAの代理人としてA所有の土地をCに売却したという事例があります。 この場合、Cが保護される場合として、109条と110条の表見代理が考えられると教わったのですが、 <109条> CがAに対し直接確認をするなど確認義務を尽くしていたら善意無過失と言え、Cの確認に対し適当に「あげるよ」などと答えたAは「B(他人)に代理権を与えた旨表示した」ことになるため、Cが確認義務を尽くした場合に限り109条の表見代理により保護される と考え納得したのですが、 <110条> そもそも印鑑の盗用は基本代理権の授与に当たるのですか?判例では似たような事例(印鑑を偽造する)で110条が否定されているような気がするのですが… 当たるとしても、Bは基本代理権を逸脱した行為をしたといえるのですか? 109条の考えがあっているのかと、110条の二つの疑問に解答お願いします。
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- fujic-1990
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判例でも出たのかなと思い回答を待っていましたが出ていないみたいで、回答が付きませんので私から解釈論を。 (1)109条については基本的にお考えの通りでよいと思います。 ただ、『Cが確認義務を尽くした場合に限り』というのはいささか言い過ぎではなかろうかと思います。 表見代理が問題になるのはおおむね「取引」です。取引が関係している場合、「取引」の性質ということが配慮に入ります。迅速でなければならないとか、それが否定されると被害が想定外のところまで広がる、とか。 つまり、確認義務を「尽くした」と言えるほど慎重に確認するよう求めたら、取引が成立しない場合が頻発するので、ある程度の確認をしたらOKとされる場合が、現実には多いのではなかろうかと思います。 もっとも、質問者さんの言う『確認義務を尽くした』状態と、私が言っている「ある程度の確認をしたら」状態がまったく「同じ状態」かもしれません。具体的事例でないと区別はできませんが。 (2)実印が盗用された場合は・・・ 判例が出ていないとすれば考えるしかないですが、私は109条のほうが適用されるように思います。 ずばり「盗用」という事例を定めた表見代理規定がないのはお考えの通りなわけですが、裁判所は判断を避けるわけにはいきません。裁判所が判断から逃げたら、当事者は自力救済するしかなくなりますから。 で、こういう場合いろいろな「解釈」というのをやります。この場合は「類推解釈」ということになるのかな。 表見代理には、授権表示の場合、越権代理の場合、代理権消滅後の場合、の3つがありますが、これらに共通する最大公約数はなにかというと、 本人に帰責事由があること 相手が善意無過失であること(帰責事由がないこと) です。 印鑑盗用の場合は、盗まれないように印鑑と印鑑手帳を管理しておけば盗用は起きなかったわけです。それなのに、結果的に不十分な管理で、Bの盗用を招いたわけです。 これを言い換えると、Aは自らの行為(実印・印鑑証明手帳などについてのいい加減な管理)によって、Bに代理権限を与えたような(Cの誤信を招く)外観を作りだしたのだ、と言ってよいのだと思います。 少なくても帰責事由は認めざるを得ない。 Cがどこまでやるべきか、について多少異論はありますが、『CがAに対し直接確認をするなど』して善意無過失であったなら、表見代理成立の条文に合致するわけですので、「109条によって表見代理が成立する」という判断になるものと思われます。 ちなみに、印鑑偽造の場合は、Aには偽造を防ぐ手立てがありません。毎日、日本中の印鑑業者が偽造に手を貸していないかと調べるわけにはいかないのです。 代理行為もAのまったく知らないところで行われます。 したがって、Aには帰責事由があるとは言えません。 他方、盗用された本物の実印と違って、偽造印鑑なら印鑑証明書と詳細に見比べればおかしな点が見つかりそうなものです。 仮に、仮にプロでも違いが分からないような上出来な偽造印鑑を持ってきても、赤の他人が「どういう経過で代理人なったのか」とか、ちょっと確認すれば奇妙な点に気がつきそうなものです。 つまり、通常はC側に落ち度がありそうです。 したがって、印鑑偽造の場合、表見代理は否定されるでしょうね。