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明治時代、外国の都市を漢字で表記したのは。
日本には仮名文字という便利な表音文字があるのに、なぜ明治・大正時代、外国の都市を漢字で表記したのですか。 当時の一部の新聞には振り仮名を付していますが、そんなことをするのなら始めから仮名文字で表記しておけば余計な手間はかかりませんね。 また、1920年代には、漢字表記からカタカナ表記に変わっていきますが、どんな事情があったのでしょうか。 よろしくお願いします。
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こんばんは。夜分に失礼します。幕末の開国に伴う一連の条約締結の文言に「華盛頓」との記載を確認することができます。 これは日米修好通商条約の冒頭、批准書の交換期日を記した一節で「三日華盛頓に於て批准書交換」とあります。この「華盛頓」は現在のワシントンD.Cを指します。 普通に読むならば、「かせいとん」となってしまいますが、これがワシントンとなるのは江戸時代の日本には英語の通詞がいなかったとの事由にもよります。ではこの条約文がどの様な手続きを経て、英語と日本語の条約文になったのかとの疑問も同時に発生するはずですよね? それには琉球の存在もあります。琉球は独立国家として日本の薩摩や清国との貿易関係もありました。その清国は既にアヘン戦争以前からイギリスやフランスそしてオランダやアメリカとの交渉窓口を有してもいました。 その中国では、アルファベットを発音に即して漢字で表記するとの手続き方法を確立していましたから、比較的違和感もなく異言語に接する機会を得ていたともいえます。 ここと琉球は交易関係にありましたから、琉球の王朝には英語を理解できる職掌の人物もおりました。外国の地名をできるだけ精確に訳さねば、政府間での遣り取りには後々支障を来す原因ともなりかねません。 そうした意味で「英語→中国語→日本語」との三段階のクッションを経たことで、より原語に近い形の発音を日本語で表記することも可能になりました。 >仮名文字という便利な表音文字があるのに といっても、実際に幕末の文献を読んでみますと、sometimesを福沢諭吉は「サモタイモス」とカナ表記にはしていますが、役人のそれは「ソメチメス」となっていて、前者が「耳で聞くことに依る、より原語に近い発音表記」を可能としていたが、後者のそれはオランダ語やゲルマン語のそれに近く、しかも「文字で書かれた言葉を読む」との姿勢に終始していたことをうかがい知る事もできます。 鷗外の『舞姫』や漱石の『倫敦塔』徳富蘇峰の『支那漫遊記』をはじめ当時文筆に携わる方々などは実際の現地での発音を優先することで、実際に自分が現地に行きそこで見聞したとの事実を読者に伝える目的でそうした方法を選択したと考えることもできます。 尚、日本の文書に仮名表記が見え始めるのは鎌倉時代以後であり、それは武家に文字を書くだけの力量がなかったことによる現実的な理由からで、漢文で書かれている当時の文書は「祐筆」と呼ばれる専門の書記官的役人による代筆であり、ほとんどは本人直筆のものではないとのことも知られています。 外国人が日本語を自らの国の言葉に置き換えて理解することを目的とした辞書の一つが『日葡辞書』と呼ばれる史料的価値の高い文献です。 「ワシントン」を「華盛頓」としたのは、実際に「(ホヮ)シントン」もしくは「ファシントン」と聞こえたからでしょう。
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- TANUHACHI
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昨晩は「発音」の視点からお話ししましたが、別の視点からの表記事例を挙げます。 アメリカ西海岸のサンフランシスコにある「ハリウッド」を漢字表記に改めますと「聖林」と一般的に表記するケースもあります。これは日本人の耳に「ハリー」と聞こえる部分が実際には“Holly”であり、これは明治時代に“Holy(聖なる)”と勘違いしたことに由来するとされています。 これは英語の発音に対して、言葉の字義から宛て字を行った事例と呼ぶことになります。
お礼
再度のご回答ありがとうございます。 わが町にも「聖林」という名の映画館があって、「セイリン」と読まず「ハリウッド」と呼んでいました。 「エデンの東」「理由なき反抗」思い出しました。
- TANUHACHI
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『日葡辞書』についての補足説明 『日葡辞書』の構成は「見出し語」をポルトガルの人が「耳で聞いた日本語の発音」をローマ字で綴り、それをポルトガル語で説明する記述方法を採用しています。
- blackhill224
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固有名詞など外来語をカタカナ書きするのは新井白石『西洋紀聞』あたりに始まり、蘭学では普通であったが、明治になっても支配層であった漢文に習熟した武士出身者には浸透せず、漢字への言い換え、読み替えはが主流でした。 しかし、外来語の急速な流入に伴い、明治43年、文部省が第2期国定読本に外来固有名詞のカタカナ書きを本格的に取り入れ、以後、カタカナ書きが普及したといわれています。
お礼
ご回答ありがとうございます。 漢文に習熟した武士出身者が明治時代の支配層になったので、必然的に漢字で表記するようになった、ということですね。 なるほど!と思います。 また、カタカナ書きになったのは、 「外来語の急速な流入に伴い、明治43年、文部省が第2期国定読本に外来固有名詞のカタカナ書きを本格的に取り入れ、以後、カタカナ書きが普及した」ということですね。 分かりました。
- koiprin
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http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000098521 というサイトに、以下のように書かれています。 ◇『あて字用例辞典 : 名作にみる日本語表記のたのしみ』 ( 杉本つとむ編.雄山閣出版, 1994 ) P.486に「あて字文化の終焉-明治以降-」という項目があるが、外国地名を漢字からカタカナ表記にした時期の明確な記述はない。 ちなみに、動植物名のあて字については、「昭和にまで、かなり一般的であったが、敗戦後は消滅させられた」 との記述あり。 ◇『漢字百科大事典』( 佐藤喜代治ほか編集.明治書院,1996 ) P.130「外来語の漢字」の項目に以下の記述あり。 「外来語を書くのに漢字を使わなくなる傾向は大正以後で、これは新しい外来語が急速に増加しそれが片仮名で書かれたということが関係している。第二次世界大戦後は、特殊なものを除いて、外来語漢字表記の習慣はなくなってしまった。 外国の人名地名の表記における漢字使用も、外来語の場合とほぼ同様の傾向をたどっている。」 ◇『現代漢字の世界』( 田島優著.朝倉書店,2008 ) 昭和21年11月16日付官報号外において、「外国の地名・人名はかな書きにする」、「外来語はかな書きにする」という告示があった事を、実際の官報の記事を掲載し、紹介している。また、P.11「外国の人名や地名、外来語の仮名表記化」にて、上記の告示について解説している。 漢字が正式な表現という意識が、平安ころからありましたが、江戸時代にも朱子学を浸透させた背景であるようですね。 新聞などは、格式を重んじていてその傾向が明治以降もあったようですね。
お礼
ご回答ありがとうございます。 「漢字が正式な表現という意識が、平安ころからあり…」それ故に「新聞などは、格式を重んじていてその傾向が明治以降もあったようですね。」ということですね。 なるほど!と思います。 他方、漢字から「カナ書き」になった理由は、 「外来語を書くのに漢字を使わなくなる傾向は大正以後で、これは新しい外来語が急速に増加しそれが片仮名で書かれたということが関係している。(中略)外国の人名地名の表記における漢字使用も、外来語の場合とほぼ同様の傾向をたどっている。」 ということですね。 外来語が増えてきたので、いちいち“当て字”を考えるのも面倒だから、発音どおりにカナ書きにしよう、ということですね。 ついでに、外国の地名もカナ書きにした、という感じですね。 なるほど!と思います。
- born1960
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字数を短縮するためではないでしょうか? 国名だけになりましたが 米 英 伊 独 露 など、現在でもめちゃ便利です。
お礼
ご回答ありがとうございます。 確かに、新聞のように字数が限られている場合、字数を少なくできるからという理由もあったでしょうね。 しかし、初めの頃は英吉利 亜米利加など字数はさほど変わらぬのに、手間のかかることをしていました。
お礼
ご回答ありがとうございます。 なるほど!琉球や中国(清国)との関係にも目を向けねばなりませんね。 この点に注目して調べてみますと、明治初期の日本は、漢字文明の先進国・中国における外国都市名の漢字表記を参考にしていることが分かりました。 15世紀初、明の鄭和は、大艦隊を率いて東南アジア、インド、そしてアフリカにまで遠征していますから、その記録には各地の地名が漢字で表記されているはずです。 日本語とは発音が違いますから多少の違和感はあったでしょうが、活字で外国の地名が分かればよい訳ですから、中国から漢字表記を導入したのは自然の成り行きだと思います。 >実際に幕末の文献を読んでみますと、sometimesを福沢諭吉は「サモタイモス」とカナ表記にはしていますが、役人のそれは「ソメチメス」となっていて、前者が「耳で聞くことに依る、より原語に近い発音表記」を可能としていたが、後者のそれはオランダ語やゲルマン語のそれに近く、しかも「文字で書かれた言葉を読む」との姿勢に終始していたことをうかがい知る事もできます。 そういうことですか! 大変参考になりました。 たしか、ジョン万次郎はニューヨークを「ヌアルク」とカナ書きしていたと思います。 聞いたとおりにカナ書きで表記すれば、聞いた人がいろいろ表記するでしょうから、混乱します。 発音がどうであれ「紐育」と決めておけば便利ですね。、 お陰さまで疑問を解消することができました。