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ベクトル解析の恒等式の証明について
数学のベクトル解析は物理数学のメインのツールになっていると思います。ベクトル解析の教科書では数多くの恒等式が示されています。その恒等式が成り立っていることを証明するための方法としてベクトルを直交デカルト座標の成分に分解し、成分が一致しているということを示して証明としています(そのようなものが多いように思います)。 そこでどうしても質問したいのですが、ベクトル解析の恒等式は直交デカルト座標などの座標系を限定した理論ではないと思うのです。曲線座標(直交・一般?)でも成り立つのではないでしょうか。なので、直交デカルト座標の成分が一致するということがそれ以外の座標系でもその恒等式が成立することの証明になっていないように思うのですが。 曲線座標系での運動方程式(流体とか電磁気とか)を考える場合、ベクトルで表現したものは座標系に依存しないということです。その変換の中で恒等式を使ったりするのでその恒等式は座標系に依存せずに成立することを示さなければならないと思うのですが。 ベクトル解析は座標系に依存しない(のでしょうか)としたら、その恒等式の成立をどのように証明していくのでしょうか。 抽象的な質問になったように思いますが、よろしくお願いします。
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- stomachman
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ANo.1へのコメントについてです。 ベクトルの演算を成分の演算に還元しちゃうとANo.1で述べたような注意が必要になる。すなわち、ベクトルを、幾つかの成分で表すという方式で「実装(表現)」すると決めたとしても、実装のやりかた(各成分がベクトルのナニを表すか、というキマリ)は勝手だから、成分の演算でベクトルの演算を実装する方法は、実装ごとにそれぞれ異なっている。つまり、ANo.1では、「普通の意味での座標変換」の話と、異なる実装の間での変換とは、意味合いが違うから混同しちゃダメよ、というごく初歩的な注意を指摘したんです。 が、ご質問の問題意識はもうちょっと深いところにあったようです。 まず、成分のことなんか完全に忘れる。代わりに、いくつかの公理を並べて「ベクトル」およびその集合(「ベクトル空間」)という数学的対象を定義してやります。公理系にはもちろん、基本的な演算や極限に関する規則が全部入っていますが、成分の話は一切抜きです。(成分による表示は、「そんなカッテな公理系を満たす対象が都合良く存在するのか?」という問いに答えるために、「一つの実装例(モデル)を実際に構成してみせる」という構成的証明をする際に使う以外には出番なしです。)こうして、ユークリッド空間を表す一つの抽象代数系としてベクトル空間を定義しておきます。次に、Eを(このベクトル空間としての)ユークリッド空間とするとき、「E上のベクトル場」fを、(とりあえず)EからEへの連続関数として導入します。 すると、divergent(div = ∇・)は div f(x) = lim[A→{x}] ∫[s∈∂A] (f(s)・n(s))/|s| ds (x∈Aを満たす連続な領域A⊂Eの連続な境界を∂Aとする。n(s)はsにおける∂Aの法線ベクトル。) という表現でなら、成分が出て来ないから実装とは無関係で、従って、その本質「ベクトル場の湧き出し, 吸い込み」も実装とは関係がない。 カルテシアン座標の成分(x,y,z)によるEの実装と極座標の成分(r,θ,φ)によるEの実装とでは、divergentの実装(すなわち「成分を使った計算方法」)も当然異なりますが、どちらの実装でも間違いなく同じdivergentを表していて、計算結果(スカラ値)が一致する。(もちろん、一致するように実装を工夫するのだから、これは当たり前です。) 言い換えれば: > そもそも発散とは何なのかというところまで目線を後退させて問う事に拘っています。 ご質問で「ベクトル解析の恒等式」と仰っているのが、上記のような成分に依らない表現であれば、仰る通り「翻訳の必要なし」です。 話をややこしくするのは、成分表示であっても「翻訳の必要なし」になるような座標変換がある、ということですね。「成分不使用⇒座標変換時に翻訳不要」は良いけど、逆は言えない。(かくて、話はANo.1に戻る。)
- stomachman
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> 証明するための方法としてベクトルを直交デカルト座標の成分に分解 そのベクトルが「直交デカルト座標の成分を並べたもの」として定義されているからでしょう。そのように定義した以上は、定義に従わなければ証明にはなりません。 さて、 「特定の直交デカルト座標系の上で成立つ恒等式は、別の直交デカルト座標系で見ても成立つ」。これは結構でしょう。恒等式は回転・平行移動によって変化しないということです。ひとたびこれを証明すれば、以後、特定の直交デカルト座標系に縛られることなく話を進められるようになります。ご質問の「座標系に依存しない」という表現がこのことを指しているのなら何の問題もない訳ですが、 > ベクトル解析の恒等式は直交デカルト座標などの座標系を限定した理論ではない いやそれはちょっと… 2次元ベクトルp=(r, θ)を直交デカルト座標(x,y)と、たとえば(x,y) = r(cosθ, sinθ) で対応付けて得られる座標系(もちろん、極座標のことです)において、同じ恒等式が成立ちますか? (r, θ)はまぎれもなく2次元ベクトル(二つの数のペア)である。けれども、ベクトルの和(r,θ)+(s,τ)=(r+s,θ+τ)は、対応する直交デカルト座標におけるベクトルの和とは全然違う話をしていることになります。 逆に、(r,θ)+(s,τ)が直交デカルト座標系におけるベクトルの和と一致するようにするには、極座標ベクトルにおける和、積、内積、微分など、すべての演算を直交デカルト座標系での結果と合うように再度定義しなおさねばなりませんが、これは、(r, θ)をいったんr(cosθ, sinθ)に写してから普通のベクトル演算を行って、また極座標に戻す、ということをやる演算に他なりません。 具体例でお確かめになれば、はっきりすると思いますよ。
お礼
回答有難うございます。抽象的な問題でかつ私個人の考え方(ひっかかり)に依拠した問題なのでレスポンス頂くのが難しいかなと思っておりましたが。 ”座標系に依存しない”という言い方は、不正確かつ私の記憶違いのような気もするのですが、座標系とはリファレンスフレームのことで、そこで生じている物理現象は1つなのでそれを記述する仕方(ものの見方)に依存しないということなのかなあと思っています。 曲線座標を考えますが、直交(極座標とか)に限定します。また、以下では発散という演算について考えます。 カルテシアン座標(x,y,z),F=(Fx,Fy,Fz)の発散(divF)は (Fx)x+(Fy)y+(Fz) ですね。(←これを定義と思い込むことが多いと思いますが) 別の直交曲線座標(u,v,w),F=(Fu,Fv,Fw)の発散(divF)は、 (Fu)u+(Fv)v+(Fw)w であるかというと、これは間違いですね。 u,v,wはパラメータであり、距離ですらないのでそもそも次元が違うことになります。 直交曲線座標での発散(divF)は、 [ d(h1h2Fu)/du+d(h3h1Fv)/dv+d(h1h2Fw)/dw) ]/(h1h2h3)であり、 h1=|dx/du|,h2=|dy/dv|,h3=|dx/dw|, xは位置ベクトル(x,y,z)となります。h1,h2,h3は極座標、球面座標、カルテシアン座標など(x,y,z)⇔(u,v,w)の具体的な関係を与えることで個別具体に形式が求まるということになります。(h1はu方向の接線ベクトルの長さであり、単位長さの基底にするために除す長さということで地球科学などではスケールファクターなどと言われたりするようです) ※この式がどうやって(できるだけ演繹的に)誘導されるのかという点についても興味あり、別途、何とか説明を得た感じは受けていますが。ただ、カルテシアン座標系から演繹されるとは思えないです。 この式は直交という特殊性が含まれていますが、カルテシアンにおける発散を包含する広い概念になっています。(直交が満たされない場合でも空間を記述することが出来る場合は座標系であり、反変・共変という概念に広がっていきますが) このように考えを進めてくると、カルテシアン座標系は特殊な座標系であり、そこで成立が確認されたベクトル解析の関係式が少なくとも直交曲線座標でも成立するという基盤が揺らぐように思えてくるのです。 カルテシアン座標系で承認された恒等式を演繹的に他の座標系に持ち込むことは、言わば翻訳でありそれは認められます。しかし、ベクトル解析の恒等式は座標系を規定していない以上、翻訳の必要なし、ということではないでしょうか。 ”すべての白鳥が白い(すべての座標系で成立する)”ことを証明するのに白鳥の実例(直交デカルト座標、極座標で成立することの例証)をいくら挙げても(ご指摘の具体的に計算してみるということ)証明したことにはならないという風に思えてくるのですが。 そもそも発散とは何なのかというところまで目線を後退させて問う事に拘っています。 (Fx)x+(Fy)y+(Fz)zはdiv(F)の定義ではないと思っているのですが。 以上、長文で申し訳ありません。