日経2007/5/31付「経済教室」ロシアの森林火災
2007/5/31日経朝刊の「経済教室」において、佐和隆光立命館大学教授が、以下のように記載しています。
、、(著作権保護のため省略)、、EUとの交渉の妥結が、ロシアの議定書批准の決め手となったが、同国が温暖化で利益を得るばかりではないかという議論は誤りだ。シベリアの凍土が溶融し、メタンが発生し森林火災が多発している。03年1-8月に火災で失った森林の面積は、日本の国土の6割に及ぶ。
この記述だと、「シベリアの凍土が溶融し、メタンが発生し森林火災が多発している。」の部分は、
A.森林火災多発の原因は、凍土溶融
B.森林火災多発の原因は、凍土溶融と発生したメタン
C.これらには因果関係がなく、並列して、凍土溶融、メタン発生、森林火災の多発、が進行している
の何れかと読み取れます。
福田正己北大教授、もしくは同教授らのグループが関わっている以下の2つの文献
[1] 自然災害科学, 23-3, pp.315-347 (2004)
[2] 小泉格、清家彰敏編、「日本海学の新世紀4」、危機と共生 (2004)
によると、シベリアの火災発生(回数)の原因は、人為的な着火が主(70%)で、落雷による着火より多い。火災が拡大した要因は、年平均気温の上昇(1830年から2000年の間に3℃の上昇)、降水量の横這い/もしくは減少と記載されてます。総じて、1.人為的な着火が存在、2.長期的な温暖化の傾向(しかも降雨量増加を伴わない)が、シベリアの火災面積が増加した要因と記載されてます。(ただし、要因1は、時間の経過と共に著しく増加した訳ではないので、要因2の方がより本質的。)
また、乾燥化→火災(地表火)→倒木などによる燃えやすいバイオマス蓄積→火災(樹冠火)→アラス(凍土が融解してできた湖沼)→メタン放出
という流れと読み取れます。つまり、凍土融解は、火災の結果生じている現象と理解できます。
従って、福田教授らの文献に基づくと、「経済教室」での佐和隆光教授の記述で読み取れる内容のA,Bは誤りとなります。
残るは解釈Cとなります。
ところが、人間の住んでいる地域での凍土融解は、人工の構造物への影響が主の悪影響で(IPCCに基づく)、森林火災によって融解した凍土(アラス)は、メタンの発生と再びタイガへ戻りにくいのが温室効果ガスの吸収/発生といった意味で問題であると言えます(福田教授らの文献に基づく。)
従って、解釈Cも誤りとまでは言えないまでも、不適な表現であると私には受け止められます。また、解釈Cのつもりで、著者は述べているかもしれませんが、解釈A、Bと受け取った人も、少なくないように私には思えます。
シベリアの森林火災について、詳しい方、このあたりのことについてご教授いただけないでしょうか。私自身の気持ちをすっきりさせたいですし、仮に「経済教室」での記述が不適切であれば、少なくともこの場で正しておくことが必要だと私は考えます。(「経済教室」の揚げ足を取っているかもしれませんが。)
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