- ベストアンサー
宇宙空間での量子暗号通信の可能性と現状について
- 光ファイバーを使った量子暗号通信は宇宙空間では利用できません。
- 宇宙空間では光通信かマイクロ波/ミリ波の無線通信になると考えられています。
- 量子暗号通信の原理は量子力学の基本的性質を用いており、実用化は進んでいるが現在ではまだ利用は限定的です。
- みんなの回答 (2)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
非常に気宇壮大な質問ですね。 私も量子通信には昔から興味があるものの理解できないところが多々ありますが、まだ回答がないので、僭越ながら私の理解している範囲でお答えします。 先ず現状の暗号化通信についてですが、これは「暗号を解くのには非常に時間がかかる」というものを用いています。 暗号化通信とは簡単に言うと、ある数字の列を暗号化の鍵として、通信文の数値の列に掛け算して送信し、受信側ではまた解読の鍵を掛け算して元の通信文に戻します。 通信経路の途中で誰かが盗聴しても、解読の鍵が分からなければ元の通信文に戻せないので安全という訳です。 そして、絶対に解けない暗号化方式は今のところありません。 例えば現在の最高速度の計算機でも解読に1年かかるとしたら、解読できた頃にはその情報は役に立たないのでわざわざ解読する人はいない、という意味で安全ですが、計算機の速度が向上して1分で解読できるようになると、もうその暗号方式は安全でなくなります。 さて、本題の量子通信の現状ですが、「量子暗号通信はすでに実現された」といっても、残念ながらまだ実験室レベルで、量子暗号鍵を配布できた、というレベルです。 量子暗号とは、「2つの物理量を同時に確定することはできない」という『不確定性原理』に基づいています。 量子力学をかじったことがある方ならご存知と思いますが、例えば1個の電子という『量子』の、「位置」と「エネルギー」など、2つの物理量を同時に測定することはできません。 光も同様で、ある時間に、またはある位置で、1個の光子の1つの物理量が「1」をとる確率は何%、「0」をとる確率は何%というあいまいな状態で伝えられます。 そしてその物理量が確定してしまうと、以後変わることはありません。 このあいまいな量子状態を、専門家の間では皮肉を込めて「シュレディンガーの猫状態」と呼んでいます。 この「猫」を通信に使った場合、途中で誰かが捕まえると、生きているか死んでいるかが確定してしまうので、元の量子状態ではなくなってしまいます。 すると、本来の受信者は途中で誰かに猫を盗まれた(盗聴された)ことが分かるので、暗号鍵を即座に変えて、安全に通信を続けることができます。 その意味で、量子暗号通信は究極の暗号化通信とも言われています。 量子通信を実現するには、先ず量子を作り、量子状態を保ったまま伝送し、量子を受信する必要があります。 光の量子を作るということは、ピコワットオーダーのごく弱い光を出すことを意味します。 量子状態は、偏光や位相がよく用いられます。 電子は、他の物理現象からの擾乱が大きすぎるので使われません。 光も量子状態を保って伝送し、かつ弱い光を受信するためには、今のところ光ファイバでしかできません。 お示しになったURLの「(2)量子情報通信の技術開発ロードマップ」には、「空間伝送も含んだ本格的な量子通信ネットワークに発展する」のは2030~2100年頃とありますが、まあ宇宙を含む空間伝送を実現するためには、ブレークスルーが2つや3つでは足りないでしょうね。
その他の回答 (1)
- semikuma
- ベストアンサー率62% (156/251)
最初に書いたように、私は量子通信の専門家ではないし、量子通信の全てを理解しているわけではないので、ロードマップに書いてある以上のことは分かりません。 が、まぁ素人なりに考えて、次のような点がポイントではないでしょうか。 先ず数十km以下の近距離の量子通信の実用化については、量子状態の安定的な生成と検出でしょうね。 現在どのようにしてこれを実現しているのか知らないので、これ以上のことは言えません。 これを全地球的なネットワークに拡げる鍵は、多分量子中継器の実現でしょう。 現在の光通信ネットワークは、光ファイバ増幅器という高性能の増幅中継器ができたから実現できたといっても過言ではないでしょう。 が、光ファイバ増幅器に限らず増幅器は必ずノイズを出します。 ノイズレベル以下で入ってくる光子の量子状態を如何に壊さず中継するかが、鍵となるのではないでしょうか。 量子空間伝送については、申し訳ないけど私には、私が生きている間に実現できるとは思えません。 だって空間を飛ばそうと思ったら、屋外なら太陽光、室内でも照明光のノイズと戦わねばなりませんから。 何とか空間伝送が実現できたとしても、これを宇宙空間にまで拡げるためには、これはもう「量子テレポーテーション」を実現するしかないでしょう。 通信手段に光子(電波を含む)を使う限り、あのはやぶさ君にだって電波が届くまで15分もかかるので、緊急時には使い物になりません。 SFチックでどうも信じられないのですが、一方の量子状態の変化が瞬時に相手の量子状態の変化につながるという、量子テレポーテーションの実現しか道はないように思います。 何もない宇宙空間でどうやって実現するかは想像もできませんが。
お礼
ありがとうございました。宇宙で機密を守るのは大変そうですね。そんなに難しい暗号をかけるより平和な地球(宇宙)の時代が来るほうが望ましいですね。 宇宙時代が来るにはもっともっと困難な生命維持の問題が横たわっているかもしれません。まあこの際通信の機密問題は優先順位を下げて考えることにします。今はエネルギー食量問題が優先ですね。失礼しました。
補足
難しい問題にお答え頂き感謝いたします。私も空間に広がってしまった光情報の盗聴をどうやって察知するのか疑問でした。semikuma様がロードマップに沿って進むためにはどのような課題解決が必要とお考えでしょうか。定性的でも結構です。もう一度だけ簡単にお答え頂ければ幸いです。それで〆りたいと思います。 よろしくお願いします。