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刑法犯罪論
焦ってます…。 事例問題なのですが,簡単にいうと甲が乙を殴りつけ,乙が逃走,その途中路上に倒れ,その後通行中の丙が乙の頭を足蹴りにしたため乙は脳挫傷により即死。 解剖の結果,乙は病院で頭蓋骨が柔らかくなっていたため甲の殴打により頭蓋骨が陥没し死亡する状態であった。このとき甲,丙の罪責はどうなるか。 というものです。 1600字論述なのですが何から考えて結論に至ればよいか混乱してわかりません。書き方のプロセスも含め教えていただければ幸いです。どうかよろしくお願いいたします。
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訂正 問題文を読み間違えていました。「丙の足蹴で即死」でしたね。 ということは、乙の死の結果は丙の行為にだけ因果関係が繋がります。 ちなみに、殺意があったのかどうかは、不明なので、傷害致死とした方が無難です。 この場合、甲の殴打行為は、乙の死の結果と因果関係が繋がりません。したがって、甲は傷害罪(殺意の有無が不明なので)ですね。 客観的相当因果関係説でも、行為後(甲の殴打行為後)に生じた特別な事情(丙の足蹴行為)によって結果が生じた場合は、因果関係が切断されます(ここまでくると、ものは言いようって感じの理屈ですが)。 条件説で因果関係を判断する場合は、注意が必要です。 そもそも条件説を採用する学説は、構成要件論を採っていないのが普通だからです。 今の学説の主流は、構成要件論です。行為論で犯罪成立要件を考えるのはリスクありますよ。 ちなみに、行為論は、 1.行為 2.違法 3.責任 4.特別構成要件該当性(条文) という順番で判断する見解です。 1の行為には、狭義の行為と、広義の行為があります。 狭義の行為とは、自由な意思に基づく身体の動静と定義するのが一般です。 そして、狭義の行為から生ずる条件関係で繋がる結果までをも含む概念を広義の行為と言います。 上記の行為は、「自由な意思」という要素以外は、すべて客観的な判断です。 この行為論の特徴は、「犯罪成立要件のはじめの段階では、社会的評価の判断(規範)である違法判断、個別的で主観的な判断である責任判断はしない」というところにあります。 この行為論の狙いは、刑事手続の初期の段階で社会的評価や主観的な事情を判断材料にすると、判断者(裁判官など)の価値観等のよって意見が分かれたり、国家権力の濫用に繋がる可能性があり、刑法の自由保障機能を害するので、それを防止しようとするところにあります。 したがって、行為論で条件説を採用したとしても、責任判断の段階で、認識していない、または、認識できない結果に対しては、故意責任を負いません。 本事案でも、丙が傷害致死、甲が傷害罪となるはずです。 Kenビジネススクール講師
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- Kenビジネス スクール田中(@kenj2011)
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続き 因果関係のこのような責任主義的な要素を容れた判断を、相当性判断といいます。 ・客観的相当因果関係説(前田先生などの構成要件要素に主観的事情を入れるべきでないとする論者が主張しています) ・折衷的相当因果関係説(団藤博士などの構成要件要素に主観的事情を必要な範囲で入れるべきであるとする論者が主張しています) 上記以外の学説もありますが、実は、最終的な結論にはあまり違いがありません。説明の仕方が異なるだけです。 客観的相当因果関係説なら、甲の行為は乙の死の結果と因果関係が繋がる可能性があります(甲の殴打が原因で死んだと問題文にあるので)。 丙の行為と乙の死の結果との因果関係は場合分けが必要です。丙の行為で乙の死期を早めたのならば、因果関係が繋がります。仮に甲の殴打が致命傷で倒れた時に既に死亡していた場合は、乙の死とは因果関係が繋がりません。 折衷的相当因果関係説では、甲の殴打と乙の死とは因果関係が繋がりません。一般人が甲の殴打時に、乙の頭蓋骨が柔らかいことを認識できたのか?の判断を行います。ただし、甲が特に乙の頭蓋骨が柔らかいことを認識していたら、因果関係が繋がります。さらに、丙の行為で死期を早めた場合は、甲の殴打と乙の死とは因果関係が繋がりません。 丙についても同様に判断します。 わかりましたか? お手持ちの基本書で、因果関係のところを熟読することをお勧めします。 Kenビジネススクール講師
お礼
丁寧に解説して頂き本当にありがとうございます。 試験にはまだ少し余裕があるのですが書き方がわからず焦っていました… 頭に入れて勉強したいと思います! 疑問に思ったのですが,解答する際は自分がどの説を指示するかで罪責が変わりますよね…? 例えば客観的相当因果関係説をとった場合に甲が殺人罪 丙は場合分けした場合も罪はなんにあたるんでしょうか? また,条件説で説明する場合どうアプローチするか教えて頂きたいのですが…よろしかったらご教授お願い致します。
- Kenビジネス スクール田中(@kenj2011)
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はじめまして。 Kenビジネススクールで法律学を教えている者です。 これは大学の試験かな? 急いでいるようなので、間に合わないかもしれませんが、返答します。 1.法学一般の論証方法 (1)書く際に意識する点 ・定義 ・趣旨 ・要件 ・効果 の四点が漏れなく書かれているか(出題が一行問題の場合は別)。 (2)事例問題の論証パターン 法的三段論法を使う。 1.大前提(法解釈) 2.小前提(事案あてはめ) 3.結論(判決主文にあたるいわゆる訴訟物の成否) (3)部分的な理由付けや全体的流れで意識する事 ・客観⇒主観 ・全体⇒個別 ・没価値的⇒価値的・必要性⇒相当性 ・原則⇒例外 2.質問の事案について (1)犯罪成立要件 ・構成要件該当性 (構成要件要素) ⇒実行行為・結果・因果関係(結果犯の場合のみ結果・因果関係を判断) ⇒構成要件的故意または過失(平野先生や前田先生などのいわゆる結果無価値論者の場合は責任段階で判断) ・違法性 ⇒正当行為かいなか(通説は、構成要件に該当すれば違法性が推定されます。ただこの推定は民事的な挙証責任の転換ではなく、被告人側に説明責任を求める程度というのが通説) ・責任 ⇒責任能力 ⇒責任故意(構成要件該当性判断でどこまで主観的要素を検討するかで、この段階での判断内容が異なります。また、規範的要素も含めるかでも対立があります) ・期待可能性(これを犯罪成立要件の要素に要れるかいなかでも争いがあります) (2)本事案の論点 本事案は、上記犯罪成立要件要素の中では、因果関係が問題となります。 因果関係とは、刑罰引き受け責任の範囲を決める基準です。 簡単に言えば、自然現象としての因果の流れは無限に繋がります。ビッグバンがなければ地球はできず乙も死ななかった…。これではおかしい。 だから、はじめは、乙の死の因果(原因)がどこにあるのかを客観的に判断します。これを刑法では条件関係といいます。 次に、刑罰の対象となる範囲を探ります。これは主観的な要素である責任主義的な判断です。つまり、甲が乙を殴った時に、乙が逃げること、途中で転ぶこと、そこで丙に蹴られること、頭蓋骨が柔らかくなっていたことで死に至ること、をどの点まで予測できたかという判断です。 一般的にも甲も予測できない結果についてまで刑罰を科すことは結果責任となり、責任主義に反します。
お礼
ご丁寧に解説頂きありがとうございました。 助かりました…!! 更に本を読んで知識を深めて試験に望みたいと思います!本当にありがとうございます。