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住基カードは身分証として使えない?
「携帯電話を新規契約する際、住民基本台帳カード(住基カード)を身分証として提示したところ、店側から『住基カードは使えない。健康保険証ならOK』と言われました。顔写真のある住基カードに対し、健康保険証に顔写真はありませんが、なぜ住基カードはダメなのでしょうか」=埼玉県蕨市の主婦(28)
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■横行する偽造事件 確かに携帯電話会社によっては、身分証として住基カードを認めないケースもある。一方、住基カードで「OK」の会社もあり、判断にはばらつきがあるようだ。 住基カードは本来、引っ越しの際の転居届など、行政手続きの効率化を目的に導入された。自分が居住する市町村が発行し、氏名、住所、性別、生年月日のほか、希望すれば顔写真も付けられるのに、なぜ身分証として認められないケースがあるのだろうか。 「カード偽造が相次いでいるから、本物かどうか分からない」 ある業者は、こう説明する。実際、住基カードをめぐってはこれまで、偽造が横行してきた経緯がある。 総務省によると、偽造などのトラブル報告は平成19年度だけで76件。そのほとんどが、カードに記載されている氏名や住所などを書き換えるなどして偽造したケースだ。大半が、偽造したカードを窓口に提出して他人や架空の名義で携帯電話や銀行口座を取得し、振り込め詐欺などの犯罪に悪用するケースとみられる。 19年だけでも、偽造した住基カードを使って携帯電話を不正購入しようとしたとして、詐欺未遂容疑などで7人の偽造グループが香川県警に逮捕されたほか、大阪や埼玉などでも偽造事件が摘発されている。 ただ、最近はこうした偽造への対策は進んでいる。 総務省の担当者は「カードの表面上に記載された文字を書き換えられても、業者の窓口でICチップの個人情報を確認し、偽造を見破れるようにしている」と強調する。 これまで、住基カードに埋め込まれたICチップには、所有者の名前や住所などのデータは入力されておらず、市町村が住基ネットで照会しないかぎり、真偽は確認できない仕組みだった。そのため、カードの表面に記載された文字を勝手に書き換えても、業者の窓口では分からなかったが、今年4月20日以降に発行されたカードには、データが入力できるようになった。 ■進む対策、伸び悩む利用 バーコードの技術を利用した「QRコード」で、カード所有者の生年月日を簡単に確認できるようにもなったため、ICチップを読み取る機器を持たない業者の窓口でも、年齢部分の偽造だけは見破れるようになっている。 「いまや住基カードは、身分証として、運転免許証とほとんど変わらない機能がある」 総務省の担当者はこう話す。実際、銀行での口座開設、レンタルビデオ店への新規入会、公的機関での手続きなどで、本人確認のための身分証として認められるようになっている。 しかし、それでも住基カードの認知度は低い。 「窓口で本人確認するといっても、確認する側が、住基カードを見たこともないというケースも少なくない」。こう話す業者の窓口担当者もいる。 総務省によると、15年8月の制度スタート後、住基カード所有者の数は増え続けているが、それでも今年10月現在で388万枚。1億2000万人超の日本人人口の1割にも満たない。 また、住基カードは市町村ごとに発行されるため、「自治体によって住基カードのデザインはバラバラ。本物か分からない」と話す業者もいる。引っ越しで住所を変えるたびに発行できるため、古いカードが他人に渡り、悪用される危険性も 払拭(ふつしよく)できない。 「本籍地の記載がないため、運転免許証発行の際に本人確認をする身分証としては認められない」(警視庁)とされるなど、カードに記載されている内容も完全といえない部分もある。運転免許証とは違い、誰でも入手できる便利な住基カード。総務省では「もっと多くのところで使えるように、引き続き偽造対策や表示の規格改良策などを検討していく」としている。(菅原慎太郎) ◇ 「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei-net.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。