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「故意」「過失」の解釈について(民法713条)
民法第713条に、 【精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。 ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。】とあります。 PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不機嫌障害)といった、精神的症状によって傷害事件を起こしてしまった場合、ここでいう「故意又は過失」にあたりますでしょうか?
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友人の話じゃなかったんですね。まあいいですけど。 結論から言えば、「当たらない」です。 713条を考える前に709条を考えないといけません。709条に該当して初めて713条の問題になるのです。 そこで709条を見ると、 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 とあります。ここで言う「故意又は過失」とは簡単に言えば、 1.他人に損害を与えるような行為を「わざと」やった。 2.他人に損害を与えるような行為をわざとではないが注意すれば避けられるのに「不注意で」避けられなかった。 ということです。つまり、ここで言う「故意又は過失」の対象は、他人に損害を与えるような行為に関するものです。 しかし、713条の「故意又は過失」は違います。区別をしていない回答がありますが、713条の「故意又は過失」は709条の「故意又は過失」とは別のことに関する「故意又は過失」です。 709条の要件を満たせば不法行為が成立します。具体的には行為者に損害賠償義務が生じます。しかし、もしその行為者が「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」であれば免責するというのが713条です。つまり、709条の「故意又は過失」があることを前提に、713条が問題になります(なければ709条の責任が生じないので713条の問題にはならない)。そして「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」であれば「わざと」或いは「不注意」で行った709条該当行為であっても例外として免責になるのですが、もしもその「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」を一時的に行為者自身が自ら作り出した場合には本則に戻って免責にならないというのが713条ただし書の意味です。であれば、713条ただし書で言う「故意又は過失」の対象は「一時的に生じた責任を弁識できない状態」ということになります。言い換えれば、「わざと」或いは「不注意で」「一時的に責任を弁識できない状態に自らを陥れた」というのが713条ただし書の意味です。709条の「故意又は過失」とは対象が違うということが判ります。 そこで本件を見るに、質問の精神疾患が「わざとあるいは不注意で自ら一時的に責任を弁識できない状態にした」結果でないことは明らかです。であれば、結論として質問の精神状態は713条ただし書の「故意又は過失」には「当たらない」となります。 と、ここまでが純粋な法律論。しかし、前回の回答でも言いましたが、そもそも質問の精神状態が「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」に当たるかどうか自体が実際にその時になってみないと判らないです。713条ただし書を論じる以前に713条本文の「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」に当たらないのならばただし書は適用の余地がありませんから、ただし書の「故意又は過失」など論じる余地がありません。ですから、純粋な法律論として質問の状態が713条ただし書の「故意又は過失」に当たらないとしてもそもそもその前提である713条本文の「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」に当たるかどうか自体が現実的にその時になってみないと判らないのです。可能性としては免責になるかもしれないしならないかもしれないがそれは将来のことであって神のみぞ知るとしか言いようがありません。 結局、「起こったときに免責になる可能性」なんて不確かなものにすがってもしょうがありませんから、まず考えるべきことは何とかして病気を治す、治らないまでも少なくとも他人に危害を与えるような行為をしない程度には症状を押さえるために労力を割くことです。 まあ精神的にまいっている人には不安の種を一つでも解消したいという意味で可能性にすがりたくなるのはしょうがないのかもしれませんが。しかし、あえて厳しく言えば、すがるべき可能性は、自分の不始末で他人に迷惑を掛けても自分が法的に責任を負わない可能性ではなく、病気が治る或いは症状が快方に向う可能性の方です。他人に迷惑を掛けることよりも自分が責任を負わないで済むことを先に考えるというのは些か身勝手すぎると言わざるを得ません。
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- ok2007
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No.5の者です。 ご自身のことだったのですね。心中お察しいたします。 民法713条は不法行為責任に関する定めであるところ、不法行為責任は被害者救済の要素が強いのです。そのため、加害者の免責は、残念ながらどうしても難しくなります。 お医者様の診断はいかがでしょうか。大丈夫とは思いますが、処方箋をきちんと服用する、ピーク時の外出を努めて避けるなどにより、傷害そのものの結果を回避でき、あるいは傷害の結果回避義務を果たしたといいやすくなります。 また、傷害の結果が生じてしまったときは、弁護士等の専門家の助力を得てもよいものと思います。
お礼
まことにご丁寧に、ありがとうございました。 可能な限り尽力いたします。励みになりました。
- ok2007
- ベストアンサー率57% (1219/2120)
精神疾患の場合、医師から禁止されている行為を敢えておこなった結果として、または、ある行為により一時的に「自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」に陥ることを予見できたのにも関わらずその行為をした結果として、一時的にその状態に陥ったときは、「故意又は過失」に当たるといえるでしょう。 ところで、713条は、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」にあることを免責の要件としています。これはすなわち、自己の行為の法的意味を認識できないことを意味します。 傷害行為の法的意味は容易に理解できるものですから、前後不覚の状態に陥っていなければ、「精神上の~状態」にはまず当たりません。 そのため、PMSではそもそもこの要件を満たし得るのはまず無理です。この場合、「故意又は過失」は問題となりません。また、PMDDでも要件充足は非常に困難です。 「故意又は過失」よりも713条本文の要件を満たすかどうかが重要と思われますが、いかがでしょうか。
お礼
ありがとうございます。ご参考にさせていただきます。 自傷行為があるほど病状がひどくても、要件充足は困難でしょうか。 もっと調べてみます。ありがとうございました。
- usotukizok
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ここに言う精神上の障害とは精神障害者だけを指しているわけではありません。一例を挙げると俗に言う泥酔状態も精神に障害がある状態になります。 即ち、お酒を飲む前から車を運転することを決めて飲み始めてその後、飲酒運転で事故を起こした場合は賠償責任を負いなさいと言うことを言っているだけです。 外で飲酒をしてタクシーで自宅に帰った後、車庫から車を出して飲酒運転をして事故を起こしたら、故意過失が無いので、損害賠償をしなくて良い。(極端すぎる気はしますが) 区別はこのようにするものだと思いますので、後は推して計るべし。
お礼
ありがとうございます。 この病と闘っていきます。とても勇気づけられました。 ご参考にさせていただきます。
少し噛み砕いて考えて見ましょう。 「精神障害がある者が、自分の行為に対して責任能力がない状態で他人に損害を与えたら、その賠償責任は負わなくてもいい。 故意・過失によって責任能力がない状態になった場合は、損害賠償をしないとあかんよ。」 元々精神障害がある方が、故意(わざと)過失(注意不測、誤り)で他人や物を傷つけるというのはどういう場合かという質問になると存じます。 自分が精神障害者だと知ってるのが条件でしょう。 又、障害者認定はされてないけど、精神的に苦しむ症状があると知ってるのが条件でしょう。 医師から飲酒を禁止されてるに関わらず飲酒した、というのが故意でしょう。飲酒が無理やりでない限りは「自ら禁止されてる事をした」のですから。 薬を飲み忘れていた、というのが過失にあたるでしょう。 ご質問にあるPMSやPMDDの症状があったというだけでは、故意過失により「責任能力のない状態」になってないので、賠償責任を免れると思います。 基本的に「責任は問われない」が「それでも故意過失があった時はだめだよ」と言ってるのです。 PMS、PMDDの症状になる事自体が「故意、過失」だとされたら、たまりません。 なりたくて病気になってる人などいません。
お礼
ありがとうございました。ご参考にさせていただきます。 この病と闘っていきます。
- v008
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鑑定を受けるしかないでしょうね、その時点で。 必要であれば鑑定留置の措置が取られるでしょうし。 わざと処方された薬品を採らずにそうなる危険を予見しながら その対処を行わなかった事による そういった状態を 作り出したという事であれば 大変悪質であり、この限りではない とされるというふうに考えって置けばいいと思います。
お礼
ありがとうございます。
- areresouka
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>PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不機嫌障害)といった、精神的症状によって傷害事件を起こしてしまった場合、ここでいう「故意又は過失」にあたりますでしょうか? あたる場合もあり、あたらない場合もある。法律はそんなに単純なものではなく、個々の事例、事情・背景、すべてを具体的にかつ総合的に勘案して決めるものである。 だからといって、試してみろとはいわない。それは未必の故意ともいえるから。つまり、医師の指示を忠実に守って、しょぼかろうがしっかり生活するということである。
お礼
ありがとうございます。
お礼
とても参考になりました。感謝しております。 大変ご丁寧にありがとうございました!