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罪刑法定主義と命令・条例での罰則の関係について
- 罪刑法定主義の考えから、法律以外で罰則を設けるには法律の委任が必要である。
- 命令で罰則を設けるには、法律による個別具体的な委任が必要である。
- 条例で罰則を設けるには、法律による個別具体的な委任は不要で、地方自治法によって足りる。
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問1 上記のような個別具体的な委任の要不要の違いは、どのような考え・根拠から導かれるものなのでしょうか? 答 「命令で罰則を設けるには、法律による個別具体的な委任が必要」であり,条例で罰則を設けるには,「法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておれば足りる」とされます(最高裁昭和37年5月30日判決)。 この取扱いの違いについて,上記判例は,「条例は,法律以下の法令といっても,公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって,行政府の制定する命令等とは性質を異にし,むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものである」ことを理由としております。 問2 個別具体的な委任とは具体的にどのような文言でしょうか? 「この法律に定める事項に違反したときの罰則は政令で定める」「この章で定める事項に違反したときの罰則は政令で定める」では個別具体的とは言えないのでしょうか? 答 「個別具体的な委任」とは,立法目的,概括的構成要件及び刑の種類・上限について定めた上での委任とされています。 「この法律に定める事項に違反したときの罰則は政令で定める」「この章で定める事項に違反したときの罰則は政令で定める」では,個別具体的とは言えず,むしろ包括的委任(白紙委任)といえるでしょう。 では,実際にどのように委任がなされているのか,その実例がなかなか見当たりません。 広く知られている政治的行為の禁止についての国家公務員法102条1項による人事院規則14-7への委任は,白紙委任として批判が強い代物です。 一応,食糧管理法と罰則の委任に関しての判例(最高裁昭和33年7月9日判決)を掲げておきます。 少し分かりにくい判例ですが,法律により帳簿記載義務違反者について3万円以下の罰金に処すると規定し,省令に帳簿記載事項について定めるべく委任をしていることが分かります。 これならば,個別具体的委任といえると思います。 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/45915B22E0BE3EB649256A850030AED3.pdf
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問「法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておれば足りる」というのは、地方自治法(14条)のことを言っていると考えて良いでしょうか? 売春勧誘取締条例を定める場合には地方自治法が相当程度に具体的で限定した委任をしているので、先に売春防止法が存在する必要はないという判断がされた、という理解で良いでしょうか? (地方自治法の文言が「相当な程度に具体的で限定されている」とは思えず、違和感がございます。) 答 結論からいえば,「法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておれば足りる」というのは地方自治法14条3項の規定を意味します。 おっしゃるとおり,この規定については,学者から「相当な程度に具体的であり,限定されて」いないのではないかという批判があるところです。 しかし,最高裁は,この規定でもって十分と考えております。 最高裁の見解に従うならば,たとえば売春防止法において,個別に罰則の委任を行うことは不要であることになります。 ただし,地方公共団体による条例制定権は,法律の範囲内で行う必要がある(憲法94条,地方自治法14条1項)ため,たとえば売春防止法を無視して条例で罰則の構成要件を設定すると,憲法94条・地方自治法14条1項違反となることがあります。
お礼
2度もご回答をいただきましてありがとうございます。とてもよく理解することができました。ありがとうございました。
お礼
お答え2につきましてはよく理解できました。ありがとうございます。お答え1につきまして、お手数ですが補足をお願いできませんでしょうか。 最高裁昭和37年5月30日判決を読んでみたのですが、「法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておれば足りる」というのは、地方自治法(14条)のことを言っていると考えて良いでしょうか? 例え話で恐縮なのですが、売春勧誘取締政令を定める場合には先に売春防止法によって個別具体的な委任がされていることが必要かと思います。 一方、売春勧誘取締条例を定める場合には地方自治法が相当程度に具体的で限定した委任をしているので、先に売春防止法が存在する必要はないという判断がされた、という理解で良いでしょうか? (地方自治法の文言が「相当な程度に具体的で限定されている」とは思えず、違和感がございます)