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どうして小さな核スピンからVHF(長波長)信号が発射できるのですか?
通常ダイポールアンテナは波長程度の大きさを持ちます。通信機の出力インピーダンスが数十オームであり空間のインピーダンス377オームと整合を取り放射効率を上げるというのが一般的な考え方のようです。 原子核のサイズで空間を見たときそのインピーダンスは殆ど無限大か殆どゼロに等しく古典電磁気学ではとても放射できるとは思えません。 しかしMRI画像は0.5ミリくらいの分解能で信号を画像化できます。 量子力学の結論といってしまえばそれまでかも知れませんがNMRは古典電磁気学の範囲で十分説明されていると思います(勘違いかも?)。核スピンによる自由な電磁エネルギーの吸収と放射については曖昧です。波動関数の収縮・膨張を言うと携帯のアンテナまで一個の電子からの放射・吸収の合成になると考えてしまいます。 MRIのような大量の光子(マイクロ波磁エネルギー)を扱うには古典電磁気学で十分なのではないでしょうか。複数の核スピンを同相で合成しても0.数ミリ単位の大きさの発振源からエバネセント(誘導場)ではなく、自由な長波長電磁波としてエネルギーを取り出せることをどう考えれば良いのでしょうか。 アンテナ技術から見るとこの不思議な現象に対して適切なコメントをどうかよろしくお願いします。
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#2,#5です。またまた断片的なコメントですが。 NMRについてはブログを書いたかたが専門家で、私は間違えているのかも知れませんが、インピーダンスマッチングはNMR現象とは別の工学的な話であって、あまりこだわらないほうが良いと思うのです。核スピンと検出器とのエネルギーのやりとりというふうに考えると、マッチングが気になるのはわからなくもありませんが。 NMR信号受信に関して、RFコイルのインピーダンスを50Ωに取るのは、純粋に同軸ケーブルや増幅器のインピーダンスにマッチングさせるためですが、それは定在波ロスとかによる信号雑音比低下を最小にしようとしているものです。あるいは前置増幅器のNFが50Ω信号源でベストとなるように設計されているとか。別に50Ωでなくても良いですし、実際にインピーダンスマッチングを全然取らない受信コイル系もあります。 「理論だけではなく”誘導放出ではエネルギーは取り出せない”ということを実験的に証明された事実はあるのでしょうか」 →Hoult論文は、「誘導放出は否定しないけどそれで説明できる信号レベルは実際の観測される信号レベルにはるかに届かない。観測される信号レベルは電磁誘導で説明される」、ということを実験レベルで証明したものだ、というふうに私は理解しています。(でも熟読理解していません。) 入力の場合って、RF励起のことですね。やっぱり量子力学的な誘導吸収だと思ってます。というか、教科書的にはそう扱われているので、私としても特に疑問を持っていない、ということです。でも、光子(電磁波)を介在させて記述するかどうかは流儀の問題に過ぎないんじゃないでしょうか。 同様に、光子とか輻射とかアンテナとか言うのが間違いかどうかはわかりませんが、それによって考え方が狭められるとしたら、ちょっと離れたほうがよいのではと思います。 前記マッチングの話に戻ります。入力(RF励起)の場合の電磁誘導現象とマッチングは別の意味で重要です。RFエネルギーは人体でマクロ的に吸収されます。それは電磁誘導による渦電流損失です。それに比べたら微々たる量のRFエネルギーがNMR励起に回るのみです。このNMR励起のメカニズムは電磁誘導とは別物です。渦損失は巨大であるため、励起コイルから見たインピーダンスを支配します。巨大なRFエネルギーをなるべく無反射で扱うために、RF励起コイルはしっかりインピーダンスマッチングを取ります。ですが、このインピーダンスマッチングはNMR現象とは無関係です。 これを翻って考えてみると、NMR信号検出時のインピーダンスマッチングもNMR現象と無関係であることがわかるのではないでしょうか。クロスコイルでなくて、シングルコイルとしましょう。そのとき送信時の負荷インピーダンス(人体の渦電流損失で決まる)は、受信時の信号源インピーダンスと同じです(相反則と言います)。受信コイルの見る信号源インピーダンスはNMR現象とは無関係の、渦電流によるインピーダンスなのです。
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- imoriimori
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#2,5,6です。 では最後ということで。 「信号のレベルは普通どれくらいか」 →済みません。知りません。というか、昔概算したことはあったのです。MRIでエコーのピークレベルをRFコイル出力でいうとどのくらいかって。概算の前はマイクロボルト級の微小信号だとなんとなく思っていたのですが、少なくともミリボルトは楽々クリアしていたと思います。結構大きな信号量だなあと驚いた記憶があります。でも、今は耄碌して概算する能力も無くなりました。。。
お礼
経験者の方に何回もご回答頂き本当に勉強になりました。感謝申し上げます。量子力学的に、回路論的に、電磁気学的にいろんな側面から考えることができ、また多くのコメントや考え方を教えて頂きありがとうございました。ご紹介頂いたブログをみると今でもNMRの基礎的な問題があることに驚きました。初心者がいろいろ悩むのもおかしくないと安心しました。また変な問題をぶつけるかも知れませんがその時はよろしくご指導ください。ありがとうございました。 #4のご専門のかたには丁寧で正確なご回答を頂いたにも関わらず返事も書かず大変失礼なことになってしまいましたが結果的にご指導いただいたことが理解できたと感じています。ありがとうございました。
- imoriimori
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#2です。部分的にお応えすることしかできませんが、 「センサーがそんなに顔にくっついていた記憶がありません」 →現在最も典型的なMRIの静磁場強度は1.5Tですが、そのとき、プロトンのラーモア周波数は64MHzです。自由空間波長は4.7mです。これに比べるとMRIのコイル配置は信号源に対し十分に近傍界に入ると言えます。 「このエネルギーがゼーマンエネルギーと共鳴するという話になっていると理解」 →励起に関してはそのとおりと私も理解しています。ですが、信号検出はまた別です。 NMR信号検出のメカニズムについては、次のブログ http://blog.goo.ne.jp/kose1953/m/200602 およびここに出てくるDavid Houltの論文が参考になると思います。 波長に制限されない位置分解能については、周波数エンコード(および位相エンコード)という仕掛けが関与していると理解していますが、これは#4さんの言われる「周波数分解能が位置分解能と関連する」ということでしょう。ただし私はいままで周波数分解能という考え方をしたことはありませんでしたが。
補足
再度のご回答感謝いたします。 (1)64MHz(4.7m)ならどう考えても 差し渡し1mくらいの測定室なら遮断導波管で内部の電磁界も誘導場、即ちスピンの作る近傍解というべきですね。失礼しました。低エネルギーの光子を放出するのが必要条件ではないのですね。 (2)ところでご紹介頂いたブログを見てほんとにびっくりしました。ピックアップコイルはインピーダンスマッチング装置として働いておりアンテナではないのですね。従ってコイルの中心(共振)周波数はラーモア周波数から大きくずれている。結論は”核スピンは光子を吸収・放出するのではなく電磁誘導によるものだ”書かれているように感じました。少なくとも誘導放出ではないとのことですね。このことは理論だけではなく”誘導放出ではエネルギーは取り出せない”ということを実験的に証明された事実はあるのでしょうか。驚きです。 (3)普通の伝送回路間の結合でも誘導場で整合的に接続できる場合はいくらでもあります。これと同じ現象がNMRで起こっているように思えます(勘違いですか?)。このとき二次コイルがなければ伝送路からの放射は基本的に起こらず全反射です。少しわからないのは50オームと言う値はどこから来たのでしょうか。核スピンの何と関係しているのでしょうか。単に測定器の入力抵抗だけではないはずですが・・・・ (4)さてimoriimoriさんは入力の場合は量子力学的な誘導吸収とお考えですか。それともやはり電磁誘導で発生する、それともどちらも同じ現象で単なる解釈上の違いですか?コイルによるRF入力の場合は整合のことは普通殆ど考えていないのではないかと思います(想像ですが)。信号出力が電磁誘導なら入力も電磁誘導と考えたい気持ちです。実験で電磁波充ててスピンエコーやった話は聞いたことがありませんよね(笑)。 (5)唯ブログに説明があったFIDの計算時間があまりにも長いというのには抵抗感があります。スピン間のカップリングを考えて10の11乗くらい確率が大きくなったとしても25乗にはとても及ばないからです。これではとても核スピンの熱平衡状態が自然には得られないと考えるからです。いや周りに23乗もの原子核があるから熱平衡に達するのは簡単かも知れませんね。 (6)もしそう考えるとNMR測定の本質は電磁誘導による核磁気の共鳴と考えるほうがわかりやすいように思えてきました。無理にアンテナとか光子(マイクロ波)とか輻射という言葉を使わないほうが誤解を生みませんね。 (7)従って私が投げかけた”核スピンはマイクロ波を吸収・放出する小さなアンテナの機能を持つ”というのは間違いである結論でよろしいでしょうか。 (8)ゼーマンエネルギーは量子力学に解かれるものですがその測定手段は古典電磁気学で考えたほうが良いといえますね。そういう意味ではレーザーの発振原理(誘導放出)と核磁気共鳴測定原理は全く異なる原理といった方が適切ですね。 ブログをみて直感的に考えてしまいました勘違いをしているところがあると思います。どうかもう一度お考えをお聞かせ願います。どうかよろしくお願い申し上げます。
電磁波の放出をアンテナという観点からだけで全て説明するのには無理がある、というのが答えのような気がします。 言及されている通り、この場合、量子力学で考えるのが適切でしょう。 NMRを古典電磁気学の範囲で十分説明されるとするのは乱暴です。 量子力学的な説明のある部分については古典電磁気学な取り扱いができる、という方が正確だと思います。 物理学の立場から言えば、より一般的な説明は、電磁波はエネルギーの一形態です。 波長が短ければエネルギーは高く、長ければ低い。 NMRの場合、核のエネルギー準位のゼーマン分裂の大きさがRF帯に相当します。 似たようなエネルギー・電磁波変換は日常の至る所で目にすることができます。 発光ダイオードやナトリウムランプ(トンネル照明)などが例です。 前者では半導体のエネルギーギャップの大きさが、後者はナトリウム原子中の電子のエネルギー準位間の差が、可視光領域に相当します。 MRI画像の分解能は異なる問題です。 例えば頭から足に向かって強くなる傾斜磁場を加えます。 すると、頭から足に向かいゼーマン分裂の大きさが大きくなります。 これにより、頭と足では核から放出される電磁波の波長が異なります。 つまり、周波数分解能が位置分解能と関連します。 これ以上の詳しい説明は省きますが、アンテナだけで決まるような問題ではないということをお分かりいただけますでしょうか。
- leo-ultra
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原子から発光される光(可視光のあたり)なんかも同じですよ。 原子の大きさは0.5nm程度なのに、出てくる光の波長500nmです。 これは原子に属する電子のスピードと光のスピードの違いだと思います。電子が1回0.5nmのあたりを回転すると、その間に光は500nmも 彼方へ行ってしまう。 核スピンが1回振動する(この表現がいいかわかりませんが)間に 光はミリメートルも彼方に行ってしまう。
- imoriimori
- ベストアンサー率54% (309/570)
部分的な答えにすぎませんが、 MRIの信号を、核スピンから放射する「電磁波」と捉えることには問題があります。センサー(RFコイル)は信号源のごく近くにあります。波長よりずっと近い場所なので、信号源の近傍界です。そこでは電磁波成分はありません(殆どないのか全然無いのかはわかりませんが、たぶん「殆どない」でしょう)。核スピンが作る磁場はしっかりあります。その磁場を電磁誘導で検出しているのです。 このことがご疑問の一部を解決する手がかりになるのではないでしょうか?
補足
ご回答ありがとうございました。一つの見解をお示し頂いたと思っています。私はMRIで測定されたことはありますが、測定したことがないので何とも言えませんが一度怪我して脳を測定されたときセンサーがそんなに顔にくっついていた記憶がありません(笑)。もっとも200MHzくらいの波長を考えると誘導場といってもおかしくないのかも知れません。 imoriimoriさんはMRIは基本的に誘導場で送信受信を行っているというお考えなのですね。確かにハードウエアーを考えるとNMRのクロスコイルも誘導磁界を用いた信号の送受信と考えたほうが解りやすいですね。しかし、しかしですね急に量子力学を持ち出すと藪蛇ですが磁場中の核スピンの全ハミルトニアンを記述するとき固有状態のハミルトニアンと電磁場との相互作用エネルギーと自由空間の光子のハミルトニアンとの和で普通は表現しますね。さらに自由空間の光子のエネルギーは角周波数だけで完全にきまりますね。このエネルギーがゼーマンエネルギーと共鳴するという話になっていると理解しています。 したがって一端自由電磁場(光子)になってくれないと量子力学では都合が悪いように思います。言い換えればハードウエアーでは誘導場で結合していてもそれは一端光子になって再びコイルで引っ掛けるということにしておいた方が良いのかも知れません。試料を完全に導波管などの遮断空間に閉じ込めてしまうとゼーマンエネルギーの放出が長波長すぎてできなくなるのではないでしょうか(つまり核スピンが言うこと聞かない)。そこでRFコイルで助け船を出してトンネル効果でエネルギーを拾っているという強引なつじつま合わせを考えています。 したがって私は磁場中の核スピンは基本的に自由空間の光子を受けたり放射する能力を持つ超小型のアンテナと考えたいのですが・・・やっぱり気に入りませんか? 再度コメント頂ければ幸せです。よろしくお願いします。
- ORUKA1951
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アンテナでも、波長あるいは半波長の必要はないですよ。放射効率という時点で、アンテナ長とは無関係に電磁波が出ているといっているようなもの。 電荷が加速度運動をするときにその周囲の磁界が変化しそれに引きずられて電場が変化する。電荷の移動範囲は関係ないです。だってアンテナ内の電子の動く速度なんてせいぜいナメクジが走る程度、電子がアンテナの端から端まて動いているわけじゃない。
補足
ご回答ありがとうございました。携帯電話のアンテナは内蔵されて随分小さくなっていることはよく知っているつもりです。アンテナサイズは それでもせいぜい波長の5%から10%が限界です。しかも実際には回路基板や金属製のケースが電流を流し、アンテナの実質的な役割をしていることは設計している技術者に確認しましたからよく理解しています。 小さなアンテナは微小電気ダイポールや微小磁気ダイポールで近似できそれらからの放射が存在し定量化できることも教科書レベルですが理解しているつもりです。電荷の空間移動が電気ダイポールを表し電流環が磁気ダイポールを表すことができます。電子の動く速度や移動距離はそこでは問題になっておりません。 波長に対して10桁以上小さな微小ダイポールからの輻射がいかに小さくその割に近傍電磁界(エバネセント波)が極端に大きくなる事をご存じだと思います。そんなことが核スピン近傍で起きているとも考えられずに質問させて頂きました。再度コメント頂ければ幸いです。
補足
ほんとに丁寧な回答とご説明に感謝します。私も少し冷静に考えねばなりません(笑)。そもそも勉強ろくにしないで教えてもらうことばかり期待していることに問題あるのですがNMRは難しすぎまして・・・ <インピーダンスマッチングはNMR現象とは別の工学的な話であって、あまりこだわらないほうが良いと思うのです。 確かに物理現象とそれを観測する手段の話をゴチャゴチャにしています。 しかし物理現象そのものが観測系に大きく左右されるとすればそれは同時に考えるべきではないかと思いました。誘導放出で飛び出した自由な光子をいかに効率よく捕まえ測定精度を上げるかは工学の問題ですが、飛び出し方そのものが測定系に左右されるとすればそれは物理現象そのものではないかと考えています。 <「誘導放出は否定しないけどそれで説明できる信号レベルは実際の観測される信号レベルにはるかに届かない。観測される信号レベルは電磁誘導で説明される」 この文章を読んで誘導放出の確立は極めて低いことを表していると理解しました。そのため小型アンテナの事例を出しインピーダンスの問題で理解しようと試みたのです。小型アンテナでも近傍界を用いて電磁誘導で拾い上げるというのは理解しやすいと思ったわけです。しかしこれは誘導場の問題ですからコイルと全く同じことですね。しかもインピーダンスは殆ど人の体で決まってしまっている。 核スピンの放出エネルギーは格子への緩和が殆どで観測手段に殆ど寄らないことが段々解ってきました。ありがとうございました。 <入力の場合って、RF励起のことですね。やっぱり量子力学的な誘導吸収だと思ってます。というか、教科書的にはそう扱われているので、私としても特に疑問を持っていない、ということです。でも、光子(電磁波)を介在させて記述するかどうかは流儀の問題に過ぎないんじゃないでしょうか。 RF励起の問題は私も量子力学で取り扱うべきだと思っています。たとえ外部入力が誘導場であってもエネルギーの移行は確実に起きるわけですから単なる流儀の問題といわれることが良く理解できました。ありがとうございました。 核スピンのエネルギーを放出して熱力学的平衡状態に移るのは物質内への緩和機構によるもので誘導場が主役になることで十分なのでしょうね。磁場中の温度で決まる物質内のエネルギー分布(ボーズ・アインシュタイン統計)の低周波部分は核スピンが持つエネルギーは誘導場でその他は電磁波エネルギーであると理解してよろしいでしょうか。つまり黒体輻射には核スピンが持つ特性スペクトル線のようなものは存在しないということが出来ますね。核スピンをアンテナに例えたのはこんな現象を頭の中で期待してみたのですが、いろいろ教えて頂いて、また自問自答しながら核スピンアンテナのコンセプトは消えました。(残念) しかし量子力学を使って記述される二つの現象NMR測定とレーザー発振とが随分違う現象であることが理解できたことは大きな収穫でした。この違いが何によるものかはまだわかりませんがこれで質問は終わりにしたいと思います。唯imoriimori さんには経験者としていろいろご指導頂いたので最後に一言頂いてから、お礼をして終わりたいと思います。よろしくお願いします。(もしご存知ならで構いませんNMR信号のレベルは普通どれくらいか教えてください)