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グローバル化と経済的・文化的自立
- グローバル化によって地域の独自の価値や文化が無視され、世界の政治や経済そして文化が同一のシステムで構築されることが問題とされている。しかし、グローバル化には自文化を守ることが期待できる側面もある。
- 例えば、インドの企業である「サティヤム」は地域の特産物である科学技術を活かしてグローバルな市場に参入し、経済成長を遂げている。このように、グローバル化によって経済的な自立が可能になり、国の文化を保ちながら発展することができる。
- したがって、グローバル化は単なる文化の画一化ではなく、経済的・文化的自立への足掛かりとなり得ると言える。
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小論文に求められるのは、考え方が正しいか間違いか自体ではなく、 専門的な知識を豊富に持っているかでもなく、 論理的で説得力のある文章で 自分の意見をまとめられるかどうかになるかと思います。 「グローバル化」を、望ましい事だと考える人もいれば、 望ましくない事だと考える人もいる。 望ましい面もあるかもしれないし、望ましくない面もあるかもしれない。 大きい書店に行けば、何百ページもグローバル化への功罪を書いた本が、 何十冊あるいは百冊以上も並べられています。 単一の正しい回答がない中で、どういう題材を選び、 どう書くと説得力があるかを考える必要があるわけです。 >しかしグローバル化によって、地域や国における経済成長を遂げることから、 >むしろ自文化を守ることが期待できるようになるのではないだろうか。 グローバル化 ↓(1) 経済成長を遂げる ↓(2) 自文化を守ることが期待できる という図式だと捉えられますが、 問題は「著者」のようにグローバル化に 不満を抱く立場の人にも説得力を持つ展開になっているかどうかです。 どのような意見を述べることもできますが、 同じような事例を用いるとしても、 例えば↓のような展開も可能かもしれません。 グローバル化 ↓(1) 開発途上国の人々は、グローバル化の「チャンス」を活かして 暮らしを豊かにすることができる ↓(2) 豊かになる過程で生じる文化変容は、新しい文化であり、 「画一化」や「多様性の否定」とは限らない ■グローバル化は経済成長をもたらすか? (1)触れたことのない予備知識かと思いますが、 グローバル化に不満を抱く政治的立場の人は、 グローバル化を、強大なアメリカ、どん欲な巨大企業、一部の金持ちが 貧しい人々から利益を搾り取るシステムとして、 経済的にマイナスであると考える傾向があります。 こうした層は、グローバル化を、巨大多国籍企業が 開発途上国では労働者を低賃金でこき使い、 先進国からは労働者の職を奪っていると考えがちです。 まあこうした考え方に長々と反論することもできますが、 ここでそういう事を延々と議論する必要もないでしょう。 ただ、グローバル化=経済成長という関係を容易に 受け入れない層もいることは留意した方がいいかもしれません。 グローバル化を経済成長に結びつけるのは理論上は可能ですが、 実際の経済成長との関係は微妙であり、 東アジアとインドを除くと、貧しい地域では 必ずしも有効に機能していない部分があります。 グローバル化と経済成長に関する統計を少し見てみても、 グローバル化ですぐに豊かになれると片付けるのはためらわれます。 しかしそれでも、グローバル化は、開発途上国にとって経済が成長して 暮らしが豊かになる「チャンス」をもたらす可能性はあります。 こういった「チャンス」の事例として、 年間300億ドル以上の輸出規模を持つようになったという インドのソフトウェア・サービス産業を取り上げれば、 説得力を持つ展開になるかもしれません。 インドの企業がアメリカにソフトウェアを提供することで、 インドの暮らしを豊かにすることは可能ですし、 アメリカ人も安価にソフトウェアを使えるようになります。 ■経済成長は自文化を守るのか? (2)経済成長が自文化を守るという図式も、 説得力のある展開になっているか考える余地があるかもしれません。 「自文化」を「守る」とはどういう意味かという問題があります。 アメリカの1800年と1900年の間でも、 産業革命、鉄道や教育の普及、政治的成熟などで 文化はがらりと変容しています。 イギリスやフランスなどの文化的影響を大きく受けています。 アメリカの1900年と1960年の間でも、 電話、自動車、ラジオ・テレビが大衆に普及し、就業構造も変わり、 「自文化」かもしれませんが生活様式はがらりと変容しています。 一方、世界には今日でも、貨幣がなくて物々交換で 暮らしている部族の集落もあります(もちろん電気や水道もない)。 経済成長とは無縁ですが、こういう所の方が先祖代々から、 伝統的な「自文化」を大切に「守って」いると言えるかもしれません。 そもそも、文化的に「良いこと」が何かは非常に難しい問題になります。 こうした考え方は人それぞれですから、どのような意見を述べることもできます。 例えば1つの考え方としては、 多くの地域は豊かな暮らしを追求しようとしています。 「アメリカによる文化破壊」に異を唱える人でさえも、 自文化を守るべく朝鮮王朝時代なり日本の江戸時代なりの 前近代の「実際の」暮らしに戻ろうなどといって、 電気や自動車などの近代化の産物を全て否認したりはできないわけです。 求められるものは、古い形を守り異なる習慣を受け入れない ことと限定されるものではないかもしれません。 文化それ自体には、常に変化が生じており、 それに抵抗感を抱く人は古今東西を問わず必ず存在しますが、 みんながその批判を受け入れて元に戻るわけでもありません。 近所の個人商店が潰れてスーパーマーケットに変わっても、 伝統が廃れてきていると嘆く人はいます。 一方、文化の変わり目は必ずしも「画一化」や「多様性の否定」 ではなく、発展と捉えられる場合もあります。 視覚的に分かりやすい例なら、中国の大都会では、 かつての「画一的」な人民服の人混みが、 多様なファッションで彩られるように変わり、 「多様性を否定しない」嗜好品が並べられるようになった とも捉えられるかもしれません。 これは先祖代々の文化を保ったわけではないですが、 自文化が侵略で消されたというわけでもありません。 嗜好性が異なるため、全くのアメリカ様式そのものではなく、 吸収の度に中国的な特色を持つよう「加工」が試みられます。 その結果現れる文化は、アメリカ文化でも伝統文化でもなく、 また異なった種類のものと捉えることもできます。 ■文化の多様性、経済的自立の意味するところは? >ここで、私はグローバル化の波に乗り、 >着実に成長を遂げている例として、 >インドの企業である「サテいアム」をあげたい。 「グローバル化による文化の多様性についてあなたの考え」 の中心を占める事例になっていないければいけないはずですが、 (衣食住や宗教、美術、思考様式といった一般に考えられている文化ではなく?) ・「インドの数学や天文学をもとにする優れた科学技術」 ・「アメリカとの12時間の時差」 が「インドの自文化」であり、このことを守りながら、 「更なる経済的な自立をとげることで 自国特有の文化を保ち、発展させる」という記述と受け取られます。 しかし、そういった企業が成長したら、どうして インドの「自国特有の文化」が保たれ、発展するのか、 あるいはグローバル企業として活躍していながら アメリカ企業とは異なるインド特有の文化を持っているかとか、 そうしたことを前面に出せば説得力が出る気がします。 細かい点だと、論文の展開の中に願望表現は不要ですから、 「グローバル化の波に乗り、着実な成長を遂げている例として、 インドの企業サティアムがあげられる。」 といった書き方だと簡潔になります。 ただ、意見を求めるような小論文だと、 感情のある表現の方が好感される場合もあるのかもしれませんが。 >他国から自立し、国際のIT産業から欠かせない存在として >位置づけているインドは今後もグローバリズムをもとに、 >更なる経済的な自立をとげることで自国特有の文化を保ち、 >発展させるのではないだろうか。 おそらく、自立とは従属的でないという意味合いなのだと思いますが、 「他国から自立する」「更なる経済的な自立をとげる」という表現では、 グローバル化の流れに逆行するものとも捉えられてしまいます。 「他国からの経済的自立」が追求されたのは1950年代からの 輸入代替工業化という時期でしたが、失敗に終わってしまいました。 最近は、海外と「関わりを持ちながら」、 経済成長を追求しようという流れに変わっています。 なお「国際の」は、「国際的な」または「世界の」という表現を使います。 >グローバリズムという世界の流れに沿って、 >インドは今後もグローバリズムをもとに 細かい点ですが、グローバリズムという表現は 時代の流れよりも思想的傾向に使われます。 グローバル化を推進する思想や、アメリカ的なものの考え方、 市場を重視して政府の役割を否定する経済思想などの意味合いがあり、 グローバル化に不満を抱く立場からは否定的な印象で捉えられがちです。 時代の流れとしては、グローバリズムという表現よりも、 グローバル化、グローバリゼーションという表現が用いられます。 ■経済成長とグローバル化?? ・中国 所得1200ドル(1990)→5300ドル(2007) 輸出19%(1990)→37%(2005) 対内進出5%(1990)→11%(2006) 対外進出1%(1990)→3%(2006) ・インドネシア 所得2300ドル(1990)→3700ドル(2007) 輸出25%(1990)→34%(2005) 対内進出7%(1990)→5%(2006) 対外進出0%(1990)→5%(2006) ・インド 所得1300ドル(1990)→2700ドル(2007) 輸出7%(1990)→21%(2005) 対内進出1%(1990)→6%(2006) 対外進出-(1990)→2%(2006) ・パキスタン 所得1800ドル(1990)→2600ドル(2007) 輸出16%(1990)→15%(2005) 対内進出4%(1990)→11%(2006) 対外進出1%(1990)→1%(2006) ・バングラデシュ 所得800ドル(1990)→1300ドル(2007) 輸出6%(1990)→17%(2005) 対内進出2%(1990)→6%(2006) 対外進出0%(1990)→0%(2006) ・ブラジル 所得7800ドル(1990)→9700ドル(2007) 輸出8%(1990)→17%(2005) 対内進出9%(1990)→21%(2006) 対外進出9%(1990)→8%(2006) ・メキシコ 所得9700ドル(1990)→12800ドル(2007) 輸出19%(1990)→30%(2005) 対内進出9%(1990)→27%(2006) 対外進出1%(1990)→4%(2006) ・ナイジェリア 所得1500ドル(1990)→2000ドル(2007) 輸出43%(1990)→53%(2005) 対内進出14%(1990)→35%(2006) 対外進出2%(1990)→5%(2006) ・韓国 所得11300ドル(1990)→24800ドル(2007) 輸出28%(1990)→42%(2005) 対内進出2%(1990)→8%(2006) 対外進出1%(1990)→5%(2006) ・日本 所得27400ドル(1990)→33600ドル(2007) 輸出10%(1990)→13%(2005) 対内進出0%(1990)→3%(2006) 対外進出7%(1990)→10%(2006) ・アメリカ 所得34000ドル(1990)→45800ドル(2007) 輸出10%(1990)→10%(2005) 対内進出7%(1990)→14%(2006) 対外進出7%(1990)→18%(2006) ・イギリス 所得24400ドル(1990)→35100ドル(2007) 輸出24%(1990)→26%(2005) 対内進出21%(1990)→48%(2006) 対外進出23%(1990)→63%(2006) ・フランス 所得26600ドル(1990)→33200ドル(2007) 輸出21%(1990)→26%(2005) 対内進出7%(1990)→35%(2006) 対外進出9%(1990)→48%(2006) ・ドイツ 所得26300ドル(1990)→34200ドル(2007) 輸出25%(1990)→40%(2005) 対内進出7%(1990)→17%(2006) 対外進出9%(1990)→35%(2006) (所得:1人当たり国内総生産(購買力平価)、2007年ドルに換算、IMFより 輸出:財・サービス輸出額÷国内総生産、UNDPより 対内進出:対内直接投資ストック÷国内総生産、UNCTADより 対外進出:対外直接投資ストック÷国内総生産、UNCTADより 輸出や直接投資ストックは上限が100%ではない点に注意)