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民法の贈与の担保責任(551条)と債務不履行の関係
民法551条について教えて下さい。 贈与契約については、条文上で担保責任(551条)が規定されていますが、この条文の意味するところとしては、贈与契約の贈与者の引渡債務 は、瑕疵があっても、債務の本旨に従った弁済として消滅し、かつ、551条により、原則として、担保責任も生じないという意味なのでしょうか? もし、瑕疵物でも債務不履行の問題が生じないとすると、不特定物でも完全履行請求は認められず、また、特定物の保存義務(400条)違反の問題も生じなくなりそうですが、贈与契約については、これらの規定の適用は排除されていると考えてよいのでしょうか? ご回答よろしくお願い致します。
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#2の回答者です。 質問者さまは、必ずしも補足をお求めではないようですが、まだ質問が閉じられていませんので…。 その後、気になって少し調べて見ました。 かつての通説は、法定担保責任説の立場から、民法551条の規整を受けるのは特定物が贈与された場合だけと考えていたようですが、近時に有力(?)な民法学者(内田教授、川井名誉教授)は、特定物・不特定物を問わず規整の対象になると考えているようです。 このことについては、質問者さまが挙げておられる「食料品店の店主」のようなケースにを例に挙げて、内田教授は、次のように述べています。 「従来の通説は、法定責任説の立場からこの規定(回答者注:民法551条)の適用も特定物に限定し、不特定物については一般の債務不履行の規定が適用されると解する。しかし、不特定物について一般の債務不履行の規定を適用するのは結果が不当である。たとえば、御中元のサラダオイルが不良品であったら、贈与者は自らに帰責事由がないことを立証できない限り債務不履行責任を負う、というのは不当であろう。したがって、売買の担保責任の場合と同様、不特定物にも適用されると解すべきである」(民法II 債権各論 第2版、東京大学出版会、2007年) そのような近時の有力説(?)を前提とすると、#の回答の中で、私が「目的物の数量の不足であるとか、量的な瑕疵については履行の追完を求めることはできるのではないでしょうか。」としたことも、いささか怪しくなります。 もとより、数量不足であることを知って贈与(手持ちが8個しかないことを知りながら手持ち全部の10個をあげるとして贈与)しているのであれば債務不履行で間違いありませんが…。 「手持ちが10個あると誤信して、「手持ちの10個を全部あげる」として贈与したところ8個しかなかった場合」は、果たしてどうか…。この場合、受贈者は「10個あげると言ったのだから、残りの2個は、別に買ってきてでも贈与せよ」といえるのかどうか…。 民法551条の趣旨から考えれば、言えないようにも思われます。 そうすると、私が述べた上記の部分は、いささか「勇み足」のようにも思えます。 申し訳ありませんが、撤回させていただいてよろしいでしょうか。 よろしくお願いします。大変失礼いたしました。
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- talkie(@utilityofa)
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具体的に、質問者さまがどういうケースを踏まえてご質問をされているかがわからないので、的確なアドバイスができるかどうか自信がありませんが…。 >この条文の意味するところとしては、贈与契約の贈与者の引渡債務は、瑕疵があっても、債務の本旨に従った弁済として消滅し、かつ、551条により、原則として、担保責任も生じないという意味< この条文は、そういう意味だと思います。 語弊をおそれずに端的にいえば、タダであげる(=贈与する)ものについてまで、瑕疵担保責任を追及されるのでは、贈与者はたまったものでない。だから、その点は勘弁してやろう、というのが、この規定の趣旨ですから。 >不特定物でも完全履行請求は認められず、また、特定物の保存義務(400条)違反の問題も生じなくなりそうですが、贈与契約については、これらの規定の適用は排除されている< う~ん。この点は、どうなんでしょうか。 まず、贈与者であっても、贈与契約が成立してから、その履行=目的物の引渡しが完了するまでの間は、善良な管理者の注意をもって贈与の目的物を保管しなければならないことは、間違いありません。 この点、贈与者も「特定物の引渡債務を負う者」であることは、間違いないでしょう。 その意味では、贈与者についても、民法400条の規定が働くように思われます。 次に、「完全履行請求権」のお話については…。 贈与契約であっても、(不特定物である)その目的物の数量の不足であるとか、量的な瑕疵については履行の追完を求めることはできるのではないでしょうか。所定の数量の目的物を引き渡すことは贈与者の本来の義務で、民法551条とは(直接には)関係のないお話ですから。 ただ、民法551条の規定が置かれている以上、贈与目的物の質的な瑕疵については、それが不特定物であっても、代替品の給付を請求することはできないように思います。 受贈者は、タダでもらうわけですから。これについて厳しく責任(瑕疵担保責任)を追求することは、贈与者に酷であるという「法理」は、このような場合に(も)働くのではないかと考えられるのです。 その意味では、贈与の目的物が不特定物であれば、完全履行請求は認められない、といえると思います。
お礼
ご回答ありがとうございます。 >具体的に、質問者さまがどういうケースを踏まえてご質問をされているかがわからないので、 例えば、実業家が、かつて世話になった恩人に、自分の持ち家を贈与する契約をした場合に、その持ち家が傾いていたときでも、引渡債務は、弁済として認められ、消滅する(483条)ことになりますが、その瑕疵が、契約後に、贈与者の帰責性によって生じた場合に、保存義務(400条)違反の問題が生じるのかという話です。 また、食料品店の店主が、余った商品を友人にあげるという話をした場合に、その食料が腐っていたときは、その友人は、腐ってないのをくれよという完全履行を請求できるのかという点です。 要は、551条で原則として担保責任を否定する規定が存在する以上、そもそも、債務不履行が成立しない(債務が消滅している)ことを前提にしていると考えられるのですが、諾成契約である以上、引渡債務が存在し、それが存在する以上、担保責任(瑕疵担保責任)の話が出る前に、当然、完全履行請求や債務不履行の話が出てくる気がしたので、その点が気になっていました。 ご回答を参照したところ、保存義務違反による債務不履行責任は生じる可能性があるが、質的瑕疵については、完全履行請求、及び債務不履行責任は生じないということですね。 ありがとうございます。もう少し検討してみます。
- ok2007
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意味は、お書きの内容で合っていると思います。 完全履行請求については、担保責任の法的性質につき法定責任説の立場に立てば、不特定物については担保責任が生じない以上、完全履行請求が認められます。 なお、判例の立場は、瑕疵の存在の認識および履行としての認容があればそれ以前は債務不履行責任、それ以降は担保責任、いずれかでも欠けば債務不履行責任となるようです(ただし、手形金請求事件の判決)。 特定物の保存義務については、担保責任が物や権利の譲渡後に生じるものであるところ、保存義務は譲渡前の問題ですから、担保責任の有無とは別に考えることになります。そして、400条の注意義務については民法は特則を置いていませんから(659条参照)、贈与契約においても贈与者は400条の義務を負います。
お礼
utilityofa様 再度のご回答頂き、ありがとうございました。 文献まで引用して頂き、なんだか申し訳ない限りです。 そうですか・・。 判例を調べてみたんですが、これといったものが見当たらず、この部分は、学説の独壇場の世界なのですね・・。 となると、深入りは危険な気もしてきました。 原則通りに考えて、特定物のみ483条により引渡債務が消滅し、551条により担保責任も原則は生じない。 他方、保存義務違反の余地は残されている。 不特定物の引渡債務の場合は、債務不履行の余地がある。 とりあえず、このように理解しておきます。 本当にご回答ありがとうございました!