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分散性媒質とフレネルの式(電磁気学,光学)
○フレネルの式は,分散性(媒質の性質が周波数により変化する)媒質で成立するのでしょうか. ○分散性媒質でフレネルの式が成立する場合,フレネルの式中の屈折率n,波数k,誘電率ε,透磁 率μに複素屈折率n*,波数k*(複素数),複素誘電率ε*等をそのまま代入して計算してもよいので しょうか.(ただし,n,k,ε,μは関連しているものもあるので,すべての変数を用いてフレネルの 式が表現されているわけではありません.また*は複素数であることを意味しています) ○電界に関する反射係数が複素数である場合について考えます. 実験あるいはシミュレーションで入射電界Eiと反射電界Erを求め,反射係数Er/Ei(これは 実数です)を計算したとします.この反射係数Er/Eiは,Re(R*)に相当するのでしょうか, それとも,絶対値|R*|に相当するのでしょうか.ただしR*は反射係数です. ○実験Aにより,ある周波数w0における媒質の誘電率ε1が求められたとします. また実験Bにより,この媒質の複素誘電率ε*(w) = Re(ε*)+j Im(ε*)の実数部と虚数部が 別々に求められ,周波数wに関する式で近似されたとします. ε*(w0)とε1を比較する場合,ε1はε*(w0)の実数部と比較すればよいのでしょうか.それとも 絶対値|ε*(w0)|と比較すれば良いのでしょうか. ご教授お願いいたします. また参考文献がありましたら,教えていただけると非常に助かります. 宜しくお願い致します.
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>媒質定数が実数のときは電場は実数)…これはやはり間違っているのでしょうか. それは表記上の問題です。 >E = [ expi{k・r - ωt} + c.c. ]/2 という表記を用いる場合には実数になりますが、 E = expi{k・r - ωt} の場合には、複素平面が位相をあらわします。 つまり電場Eの絶対値|E|=E * E' (E' はEのcomplex conjugate)が電場の大きさを表し、実部と虚部の組み合わせは位相を表すようになります。 この表記の仕方を推し進めたのが Jones vector であり、x,yそれぞれの方向の電場に対しての各電場を、この複素平面を使うことで位相をあらわせるようにしました。(偏光を扱う場合には各電場成分の位相情報の相対関係が重要となるので複素数をうまく利用して表現するわけです) >媒質定数(μ,ε)が複素数であるから,Eは複素数となるという解釈をもっていたのですが(つまり, とは限らないんですね。波の複素平面を利用した表示方法の一つなのです。 そうすることで計算が容易になるのでこの手法が使われるわけです。 >|Er/Ei|^2はEr/Eiとその複素共役の積となっているということですね. そうです。 >そして,フレネルの反射係数Rも複素数であり,R=Er/Eiであるので, > |R|^2=R * R' >I = 定数×|R|^2 >を用いればよいということになるのですね. そういうことです。 ちなみに、「位相」を全く考慮する必要性が全くない場合には、面倒なのでRe[E]をとり、表記してしまうことも行われます。 ただその場合には位相情報が欠落するので、適用できる範囲に気をつける必要があります。 もちろん、逆にEの位相情報を複素平面に持たせて扱うやり方も、非線形現象を扱う場合には問題となるので、先に述べたcomplex conjugate との和によりEが実数を維持するようにするやり方も行われます。 つまり、適所適材で複数の表記方法、手法があることになるので、そのあたりはよく注意をする必要があります。 一般的な物質の分散を扱い、非線形を扱わない場合にはEの位相を複素平面で扱うやり方が一般的です。これは計算が容易だからという理由です。
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- walkingdic
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複素数は複素数のまま取り扱います。 >この反射係数Er/Eiは,Re(R*)に相当するのでしょうか,それとも,絶対値|R*|に相当するのでしょうか どちらも間違いです。Er/Eiは複素数のままです。複素反射係数と呼びます。 実験で観測結果として直接Er/Eiを得ることは出来ません。実験では光強度としてしか観測できませんので、|Er/Ei|^2 つまり、複素数であるR=Er/Eiでは、複素共役のR'との積、|R|^2=R * R'という形になります。 Er,Eiは電場の複素振幅といいます。 マクスウェルの方程式で、E = expi{k・r - ωt} を解として考えるのが初めにあり、その流れとして誘電率が複素数になります。 k,rは通常はベクトルで・は内積を表します。 ここでは話を簡単に、z方向に進む光として、kはその波数と考えれば、いま、kを複素数とした場合を考えると、 k=k' +i*k'' (k':実部,k''虚部)と表すことが出来、 E= exp [ i*k'*z + (i*i)*k''*z - ωt ] と展開すると、 E= exp [i*k'*z - ωt] * exp[-k''*z] となります。ここで、第二項を見ればわかるようにz方向に単純に減衰する項になっています。これが吸収です。 つまり電場Eをマクスウェル方程式の中で複素数として扱い計算する扱いの中で、誘電率の虚部はまさにこの吸収を表すように仕組んでいるわけです。 複数の電場がある場合などでは位相ずれの項も欲しくなるので、expの中に更にφを入れるなどもしますが、吸収と屈折という分散の扱いの中では特に不要なので、省略しています。 ちなみに、k'*zはたとえばt=0としたときの瞬間的な波の位相分布を表すことになります。 ということで、No.1さんの回答の通り、波を複素数で表現するということの基本部分に問題があります。 ところで、この電場の表記ですが場合によっては注意が必要になります。実はより正確に電場を表すやり方として適切なのは、 E= [ expi{k・r - ωt} + exp-i{k・r - ωt} ]/2 という表記です。これですとEに虚部は現れません。簡単には、 E= [ expi{k・r - ωt} + c.c. ]/2 (c.c. は Complex Conjugateの略) と書いたりします。 つまりこれをマクスウェルの方程式の解とするやり方です。 通常は式が長くなり面倒等の理由で、Eは複素数で扱い、実部と複素数で位相を表現しているのですけど、たとえば電場の二乗、三乗を扱う非線形現象を扱うような計算の場合には、それだとまずいので、上記のような表記を使います。いずれにしても屈折率にしても誘電率にしても、複素数になるのは、波の表現として複素表示(expと複素数を使って波を表現する)することと不可分な一体の話なのです。
補足
丁寧なご回答ありがとうございます.とても勉強になります. >通常は式が長くなり面倒等の理由で、Eは複素数で扱い、実部と複素数で位相を表現しているのですけど、たとえば電場の二乗、三乗を扱う非線形現象を扱うような計算の場合には、それだとまずいので、上記のような表記を使います。いずれにしても屈折率にしても誘電率にしても、複素数になるのは、波の表現として複素表示(expと複素数を使って波を表現する)することと不可分な一体の話なのです。 御指摘ありがとうございます. 複素数を含む式の解釈には難しいものを感じます. ご指摘された内容と被ってしまうのですが,もしよろしければご回答宜しくお願いします. E = [ expi{k・r - ωt} + c.c. ]/2 にオイラーの式を適用して, E = {cos(k・r - ωt)+isin(k・r - ωt) + cos(k・r - ωt)-isin(k・r - ωt)}/2 = 2cos(k・r - ωt)/2 = cos(k・r - ωt) (本によってはRe{expi{k・r - ωt}}) となるため,expと虚数i({}の前にあるi)による波の表現は実際は実数を表しており,媒質定数(μ,ε)が複素数であるから,Eは複素数となるという解釈をもっていたのですが(つまり,媒質定数が実数のときは電場は実数)…これはやはり間違っているのでしょうか. >Er/Eiは複素数のままです。複素反射係数と呼びます。実験で観測結果として直接Er/Eiを得ることは出来ません。実験では光強度としてしか観測できませんので、|Er/Ei|^2 つまり、複素数であるR=Er/Eiでは、複素共役のR'との積、|R|^2=R * R'という形になります。Er,Eiは電場の複素振幅といいます。 Er/Eiは複素数なので,光の強度 I = 定数×|Er/Ei|^2 の|Er/Ei|^2はEr/Eiとその複素共役の積となっているということですね.そして,フレネルの反射係数Rも複素数であり,R=Er/Eiであるので, |R|^2=R * R' I = 定数×|R|^2 を用いればよいということになるのですね.有難うございます.
- chiezo2005
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質問が多いので分けて投稿されたほうが良いと思います。 質問から察するに,波を複素数で表現するということの基本的な理解ができていないと思われます。 参考文献とのことですが,普通の電磁気や光学の本をしっかり読んでよく理解することです。 最初の質問: フレネルの式はある波長(振動数)の波に対して成立する式ですので,分散があろうが無かろうが成立します。 分散が有る場合には屈折角が変化しますから白色光をプリズムを通すと虹色に分解するという小学生でも知っている内容になります。 2つ目以降の質問: 電界などの物理量はすべて実数です。複素数のものは存在しません。 ただし,波の場合には複素数で表現すると位相と振幅を同時に表現できるのでこの表現が多用されます。 質問の内容が微妙な表現なのでYesともNoとも答えられません。 (というのは実験,計算でもとめた電界というのは実数とのことですが,波の場合は電界は振動数ωで変化しています。したがって,反射係数も振動数ωで変化しています。つまり実数の反射係数というのはあまり意味のある数字にならないのです。)
補足
ご回答有難うございます. フレネルの式が分散性媒質で使用できることが分かりました. 質問内容に関する捕捉です. 波を複素数で表現することと,分散性媒質の媒質定数(例えば誘電率)が複素数になることは別であると考えています.すなわち,波を複素数で表現するのは,電気工学でのフェーザ表示と同様,大きさと位相のみで表したほうが式が簡略化できるために使用されます.つまり,実態は実数です.それに対し,複素誘電率ε*がε*(w) = ε(w)(1 + χ(w))で表現される場合,電束密度Dは周波数領域において D(w) = ε*(w)E(w) と表され,時間領域に変換するとコンボリューションの形で表現されます.ここで,χ(w)は誘電感受率で複素数です.このχ(w)はフェーザ表示のように単なる表現ではなく,虚数部も電束密度Dへ影響を与えます.このことは,ただの表示法と本質的に意味が異なるように感じるのですが,いかがでしょうか. 分散性媒質の場合,屈折角の変化だけではなく,屈折率も複素屈折率になります.すなわち,理論的に導かれるフレネル係数は複素数になることがあります.この理論的に導かれたフレネル係数が,実際の現象で得られる値とどのようにかかわりがあるかを知ることは意味がないとはいえないと思うのですがいかがでしょうか.
お礼
>適所適材で複数の表記方法、手法があることになるので、そのあたりはよく注意をする必要があります。 同じ現象に対して,数学的な表示法を変えてみることで,いろいろな物理的な解釈を生み出していることが分かりました.より詳細な理解を得るのために, E = [ expi{k・r - ωt} + c.c. ]/2 という表記を用いた場合と, E = expi{k・r - ωt} という表記を用いた場合について,同一の現象に対してシミュレーションを行って結果を対比してみようと思います. 親切なご回答ありがとうございました.