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ニスの変色

 例えば、レンブラントの「夜警」は、ニスの変色によりあのように暗くなったそうです。  そこで、ニスの変色のメカニズムを詳しく教えてください。出来るだけ科学的な説明希望。

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回答No.1

ごきげんよう。 とりあえず調べてわかったことを述べていこうかと思います。長文失礼。 まず基本事項から。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ■『夜警』について オランダの画家レンブラント(Rembrandt Harmenszoon van Rijn, 1606-69)の36歳の時の作品である『夜警』は、18世紀末頃から呼ばれ出した通称で、実は『フランク・バニング・コック隊長の市民隊』という原題があり、元々は昼の情景を描いているのだという。オランダでは16世紀から市民隊(自警団)の記念肖像が描かれるようになり、一般市民の集団の肖像画というジャンルでいくつかの傑作が生み出された。ではなぜ『夜警』と呼ばれてきたかというと、現在までに修復でニスを塗り重ねられてきた過程でニスの変色や埃等の付着により暗くなってしまい、夜の雰囲気となってしまったためだとされる。 ■「ニス」について ニス(ワニス)とは、樹木から採取される天然樹脂や、天然樹脂に似せて化学的に作り出した合成樹脂を、揮発性有機溶剤に溶かして作られるのが基本とされる(さらにその中にいくつかの薬品を入れる場合もあるようですが)。ニスの役割は以下の通り。 1)保護層形成 油絵の表面に透明な保護膜を与え、将来、画面が汚れたときにはニスだけ塗り替えたらまた画面に新鮮さが戻るようにする。 2)ニスによる絵画の演出 透明なニスが画面の艶(つや)の調整をする他に、ニスに淡い着色をしておくと画面に微妙な変化を与えることができる。女性の肖像に微かに赤みを帯びたものをかけるとみずみずしい肌とほんのりと色気をかもしだす。やや褐色がかったものを使うと大変に落ち着いた感じになる。メーカーからは古色をつけるニスといった商品も出ている。こうした艶の変化や微かな色の変化は画家にとっては制作の過程から計算済みである。 なので、発表された作品が収集家の手に渡り年月を経るうちに、本当の画面保護用ニスをかけられ、それが複数層になると、ニスの変色や汚れなのか仕上げの艶や色の調整なのか、判別に苦しむものも少なくない。 手作りニスの処方例(01~09まで)  http://cc.musabi.ac.jp/zoukei_file/02/gayoueki/01ni.html (2のように、ニスには元々暗色系の色がついており、そういうニスを塗ったことが絵画を「魅せる」ためのレンブラントの演出ではないか、という説も一部にはあるらしいのですが、この回答は「ニスの変色」の話なので影響は特にありません。) +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 天然樹脂は動植物の分泌物として産し、ダンマル、マスチック等の軟質樹脂と、コーパル、琥珀などの硬質樹脂に分類され、それぞれ特性に応じて絵画用に使用されてきました。そのうちニスの原料としては、ダンマル樹脂やマスチック樹脂が西洋絵画の作成に使用されてきたようです。 樹脂  http://www.artnavi.ne.jp/representation/gazai/a-3-3-2.htm 樹脂 - Wikipedia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%B9%E8%84%82 西洋絵画の画材と技法 - 天然樹脂  http://www.cad-red.com/jpn/mt/mdm_rsin.html 合成樹脂 - Wikipedia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E6%88%90%E6%A8%B9%E8%84%82 「樹脂」と呼ばれるぐらいですから、水に溶けない、高分子化合物からなる物質です。なのでテレピン精油、ペトロール油、スパイクラベンダー油(アスピック油)などの揮発性有機溶剤に溶かしてニスが作成され、絵画に塗られて有機溶剤が揮発してしまっても主に樹脂が残り、修復のためにニスを除去する際に、また有機溶剤が使用される、ということになります(ぺトロール油は揮発しないようですが)。 以上のことから、絵画に塗られたニスが変色するのは4つの可能性があり、  1)樹脂を構成する高分子化合物の変化による変色  2)残った有機溶剤の反応変化による変色  3)樹脂と有機溶剤の反応による余分な生成物質による変色  4)ニスに加えられた各種安定剤の反応変化による変色 ニスの精度・出来や保存状態が良いと仮定しますと、時間経過によるニスの変色には(1)や(4)の影響が大きいと考えます。天然樹脂および合成樹脂の高分子化合物や、各種安定剤による色変化は以下の通り。 ■黄変を引き起こす要因 (1): 熱や紫外線などの外的エネルギーによって、高分子素材が化学的に不安定になり、変質した結果、発色原因となる構造体が樹脂中に生成する。 (2): NOxなどの汚染ガスをはじめとした黄変を引き起こす化合物と接触することで、高分子素材が化学的に変質し、発色原因となる構造体が樹脂中に生成する。 (3): 高分子素材中に含まれる各種安定剤が上記1や2の理由で発色原因となる構造体に変質することで、高分子素材が着色する。 高分子素材のうちウレタンの黄変の例が、以下のURLに載っています。  http://www.sponge21.com/product/glossary/ohen/ レンブラントの『夜警』のニスがどういう原料から作られたのかが(研究者でなく文献を読んでいるわけでもないので)わからないこと、さらに、各樹脂に含まれる高分子化合物の組成式がわからないことなどにより、『夜警』その他の絵画のニス変色がどういうメカニズムで生じたのか、全てが同一の原因によるものとして記述できるわけではありません。しかし材料の特性から、一般のニス変色のメカニズムはこんな感じではないかと推測されます。 絵画を描いたり扱っている人間ではないので、現場や最先端の研究の知識とは違っているかもしれませんが、訂正等がありましたらまた来ます。 失礼いたしました。

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